【ブリュッセル福原直樹】「豊かな生活」を求めアフリカ各国からスペインやイタリアに押し寄せる不法移民について、欧州連合(EU・25カ国)が対応に苦慮している。今年だけで約3万人が漂着した伊、スペインはEUに監視態勢の強化を求めているが、資金難からEUの反応は鈍いままだ。両国は「このままではEUは大量の不法移民を抱えてしまう」と訴えている。
EUによると、スペイン領のカナリア諸島には8月、連日数百人がマリなどアフリカ各国から漂着。不法移民の数は、今年計約2万人となった。また、伊南部のランペドゥーサ島には、今年に入りモロッコやリビアなどから1万人が漂着。8月下旬には同島そばで移民の乗った漁船が沈没し、数十人が行方不明になっている。
今夏、スペインは不法移民の一部を故国に強制送還する一方、EUに援助を依頼。EUの国境管理庁(本部・ワルシャワ)も英、仏、伊、ポルトガルなどに協力を求め、8月からカナリア諸島の海域で監視を始めたほか、伊南部の海域でも監視を行う方針を決めた。
だが同パトロールへの参加は艦艇、航空機各2だけで「多くの効果は望めない」(EU高官)状況だ。伊のプロディ首相は「EU各国の協力が必要だ」と異例の声明を出した。
しかし、EUの「内閣」である欧州委員会は「すでに予算を使い果たしてしまった」と協力を否定しているほか、各国も予算難から艦艇などの派遣には消極的。伊、スペインは、今月末のEU内相会議で再度、協力を求めるが、根本的な解決策はないのが現状だ。
毎日新聞 2006年9月5日