国民生活金融公庫は07年度から、経営にかかわらない連帯保証人を求めない場合の貸出金利の上乗せ幅を現行の0.9%から0.6%に引き下げ、連帯保証不要の融資を拡大する。連帯保証に対し「借りた本人以外が借金に苦しむ」との批判が出ていることに対応したが、多重債務問題に取り組む弁護士らは「連帯保証そのものの廃止が必要」と指摘。政府系金融機関が連帯保証人を取ること自体の是非も問われそうだ。
同公庫は、連帯保証人がいらない無担保融資制度を03年1月に導入。だが、連帯保証人がいる場合に比べて金利が4割近くかさ上げされるため、利用は融資額全体の約1割にとどまっている。
政府系金融機関のうち、中小企業金融公庫などは連帯保証人を原則として求めていない。しかし国民公庫は「財務体質がぜい弱な零細企業が融資先となるため、連帯保証を求めるケースが多い」(公庫関係者)という。
同公庫の融資先は133万社に上り、1機関で国内の信用金庫全体と同規模。このため、連帯保証人に融資先の経営状況などを十分に説明する余裕がなく、電話で保証人を依頼することも多い。中小企業関係者からは「取引先の依頼なら、不安を持っても断れない」など改善を求める声が出ていた。
連帯保証制度を巡っては、企業が金融機関から融資を受ける際に返済を保証する信用保証協会が今年4月、原則として連帯保証人を求めないようにした。安倍晋三官房長官が中心になってまとめた政府の「再チャレンジ推進会議」は5月、連帯保証に依存しない融資の拡充を訴え、全国銀行協会にも協力を要請した。
消費者信用問題に詳しい今瞭美弁護士は「保証を引き受け、多額の借金を背負わされて人生が台なしになるのはおかしく、政策金融機関がやるべきではない」と話している。【山本明彦】
■ことば(連帯保証人) 借金を返済できなくなった場合に返済を肩代わりする責任を負う。単なる保証人は借り手が返済できない場合だけ肩代わりを求められるが、連帯保証人は借り手と同等の責任を負う。事業に関与していない経営者の知人らが経営状況を詳しく知らないまま連帯保証人になり、多額の借金を背負うケースもある。
毎日新聞 2006年9月13日