安倍晋三官房長官が目指す首相官邸機能強化策の概要が13日、分かった。日本版NSC(国家安全保障会議)の創設▽官房副長官の増員▽内閣広報の強化▽省庁幹部職員の政治任用--などが柱。ただ、NSCなどは法律の制定や改正が必要で、法案提出は早くても来年の通常国会になりそうだ。このため政権発足時は、暫定的に現行の仕組みを活用し、2段階で機能強化を図る。
安倍氏は政権構想で「首相官邸主導体制の確立」を打ち出した。これより先、安倍氏に近い自民党の中川秀直政調会長は同党の「シンクタンク2005・日本」に具体策の検討を指示。8月に民間有識者5人による「政治力強化プロジェクトチーム」を発足させて検討作業を進めており、月内にも新総裁に提出する。
NSCのモデルは米国の国家安全保障会議。設置法に基づく本格的な組織とする方向で、法制定までは海外経済協力会議(議長・首相)を活用する。同会議は政府開発援助(ODA)に関する意思決定を行うため、安倍長官が4月に設置した。20人程度のスタッフがおり、安倍氏周辺は「実はNSCの卵として作った」と説明する。
官房副長官は、政治家が就く政務職を5人に増やす構想だが、現行の内閣法では2人しか認められていない。このため、5人まで置ける首相補佐官に、与党の中堅・若手議員を5人登用。それぞれに(1)外交・安保(2)経済(3)教育(4)再チャレンジ(5)行政改革を担当させ、内閣法改正後に3人を副長官に昇格させる。
一方、シンクタンクが重視するのが官庁幹部の政治任用の拡大だ。現在は、閣議了解の対象となっている局長以上の人事も、役所の案を自動的に認めているが、「首相と政策的に一致する人が幹部になる環境を作らなければならない」(自民党関係者)としている。
これまでほとんど表に出る機会のなかった内閣広報官も役割を一変させる。政権中枢に参画させ、定例の記者会見も行う。代わりに官房長官は会見を減らして「黒衣」役に徹するスタイルを検討。官邸の運営が様変わりする可能性がある。【中西拓司、米村耕一】
毎日新聞 2006年9月14日