豪州人スキー客目当ての「リゾート開発」、依然続く「つくばエクスプレス(TX)の開通効果」--。19日付で発表された基準地価で、上昇率が高かった土地にはそれぞれ大きな理由があった。有名リゾート地の売買活発化は景気回復のバロメーターともいわれる。だが、「地価上昇」を引っ張る東京圏でも、脚光を浴びる地域がある一方、下落が止まらない地域もあり、「土地の選別」が深く進行している様子がうかがえた。【長谷川豊、和田浩幸】
住宅地の上昇率全国1位を記録したのは、北海道倶知安(くっちゃん)町山田地区(通称・ヒラフ地区)。
同地区では02年ごろから豪州人が増え始めた。上質なパウダースノーが人気を呼び、米同時多発テロ(01年9月)の影響で欧米リゾート地を敬遠する動きも重なったとみられる。05年度の外国人宿泊客数は、4年前の約18倍となる延べ7万6067人。豪州資本の進出が相次ぎ、豪州系リゾート会社によるコンドミニアム8棟が完成、さらに約20棟が建設中だ。
今年1月現在の外国人所有の土地も249区画に達し、04年の11区画から急増した。
「旧軽井沢」と称される長野県軽井沢町の調査地点では、4.5%の上昇(昨年は3.6%)。軽井沢の動きは、都心部の富裕層による購入とみられる。ビーチで有名な沖縄県恩納村(おんなそん)の調査地点でも軒並み上昇した。
だが開発業者は、バブル時代との違いを強調する。
倶知安町で豪州系と連携して約1万平方メートルの土地を取得した地元不動産会社「ラッド」の佐々木正社長は「狭い地区で多大な需要があるのだから地価が上がるのは当たり前。豪州人観光客はまだまだ増えそうなので、採算は合う」と話す。また、栃木県那須町で700万円台を中心に別荘地を販売する「東急不動産」も、「購入者の大半は東京近郊に住む60歳前後の団塊世代。定住志向が強く、あくまで実需だ」と解説する。
一方、東京圏の住宅地の「上昇率ランキング」では、上位10地点のうち4地点がTX沿線で占めた。東京都足立区や茨城県守谷市の調査地点で、残る6地点はいずれも港、渋谷区の都心で、上昇ぶりが際立つ。
TXは昨年8月に開業、つくば(茨城県)と秋葉原(東京都)を最速45分で結ぶ。1日平均の乗車人員は18万5100人で、不動産業界は「沿線開発はまだまだ続く」と熱い視線を注ぐ。
ところが、「下落率ランキング」をみると、10地点すべてが茨城県内だったことも分かった。利根町、取手市、竜ケ崎市などTXからは遠い地域で、バブル時代にはJR常磐線を使う通勤客目当ての開発が進み、地価がはねあがった。しかし、都心回帰の流れに加え、利便性の高いTXの開通で、同じ茨城県内での明暗が分かれた。
茨城県庁の担当者は「TX沿線以外の地域は水戸市を含めて下落が続いている。同じ東京郊外でも土地の個別化が進む一方だ」と話している。
毎日新聞 2006年9月19日