商業地の上昇率ポイント1位から3位を占めた名駅地区=名古屋市中村区で、本社ヘリから大竹禎之写す
国土交通省は19日付で、今年7月1日時点の都道府県地価(基準地価)を発表した。3大都市圏(東京・大阪・名古屋)平均は、16年ぶりに住宅地・商業地でそろって上昇に転じた。バブル崩壊以降初めてとなる。不動産投資の拡大や都心回帰を背景に、大都市中心部は地価下落に歯止めが掛かったといえそうだ。また札幌、仙台、福岡などの拠点都市の商業地も上昇に転じた。一方で、地方圏の調査地点の9割以上で下落は続き、全国平均は15年連続のマイナス。下落幅は住宅地2.3%(昨年3.8%)、商業地2.1%(同5%)と縮小したものの、「地価の二極化」が鮮明になった。
3大都市圏平均の上昇幅は、住宅地が0.4%(昨年2.8%下落)、商業地が3.6%(同2.1%下落)だった。東京23区では昨年、住宅地・商業地の調査地点(各300以上)のうち上昇したのは34~35%だったが、今年は全地点(100%)となった。大規模な再開発が続く港区は、住宅地で24%(昨年5.8%)、商業地が19.6%(同4.4%)と急上昇。一部では「ミニバブル」的な価格上昇もあったが、国交省は「立地が良い場所の上昇で、投機的とは断定できない」とみている。大阪、名古屋両圏も同様に上昇地点が増加。上昇率ランクでは、名古屋駅前周辺の商業地3地点がいずれも30%超でトップ3を独占した。また郊外でも交通利便性が高い地域を中心に上昇地点が広がっている。
地方で下落幅が広がったのは、住宅地で山形、島根、香川、高知、長崎、大分、宮崎の計7県(昨年は16県)、商業地は熊本県だけ(同8県)で、下げ止まりの傾向がみられた。拠点都市は中心部の地価上昇が波及し始め、札幌市で住宅地1.2%、商業地7.6%の上昇に転じたほか、仙台市と福岡市でも商業地が上昇した。しかし地方圏全体で下落幅は縮小しているものの、昨年とほぼ同じ9割の地点で下落は続いている。
全国の最高価格は、住宅地が11年連続で東京都千代田区五番町12の6(1平方メートル当たり268万円)。商業地は13年ぶりに中央区銀座2の6の7の「明治屋銀座ビル」(同1900万円)。【長谷川豊】
【ことば】基準地価 土地取引を円滑、適正に実施するため、都道府県が国土利用計画法に基づき毎年7月1日時点で調査する基準地の地価。今年の調査地点は全国2万5346カ所。国土交通省が毎年1月1日時点で調べる「公示地価」とともに土地取引の目安となる。公示地価とは違い、都市計画区域外の林地なども調査地点に含まれる。地価の指標には、国税庁が調査する「路線価」もあり、相続税などの財産評価に使われる。