来年からミナミマグロの日本の漁獲枠が半減されるという報道に、不安を感じた人も多いのではないか。国連海洋法は64条で、マグロなど高度回遊性の魚を取っている国は、国際機関を通じて回遊魚の保存と最適利用のために協力する、と定めている▲そして1950年以降、五つの国際的な地域漁業管理機関が設立された。古い順に、全米熱帯マグロ類委員会、大西洋まぐろ類保存国際委員会、みなみまぐろ保存委員会、インド洋まぐろ類委員会、中西部太平洋まぐろ類委員会だ。世界最大のマグロ消費国の日本は、全委員会に加盟している▲こうした体制で、マグロの国際取引では、違法・無報告・無規制(IUU)国からの輸入を禁じ、許可された漁船のマグロ以外の取引を禁じている。また、小さなマグロを地中海で蓄養したマグロの取引には、登録された蓄養場の証明書が必要だ▲今回、漁獲枠半減を決めたのは「みなみまぐろ保存委員会」だ。ミナミマグロは豪州南沖と、アフリカのケープ岬南沖を回遊するマグロで、早くから乱獲された。漁獲量は1961年の8万4600トンから6分の1に減った。委員会は日本と豪州、ニュージーランド、韓国で構成し、日本と豪州の過剰漁獲が指摘された▲マグロの国際取引をいくら強力に管理しても、許可された漁船が過剰漁獲したら、資源の減少は避けられない。漁業者がルールを破ってまで多くのマグロを取るのは、日本が高値でいくらでも買ってくれたからだ▲だが、最近では日本より高値でマグロを買う海外の業者も出現し始めた。日本食の人気が高まり、マグロのうまさを世界の人が知ってしまったからだ。かつて刺し身はごちそうだった。そんな時代に、また戻るのであれば寂しい。
毎日新聞 2006年10月22日