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日本が核兵器を保有することについて「いろいろな議論をしておくのは大事だ」という麻生太郎外相の発言を、まったく間違いだとは言えない。私だってこれまで何度も同僚らと議論はしてきたからだ。でも、結論はいつもこうだ。
日本は米国の核の傘に入っている。周辺国から見れば事実上の核保有国とさえいえる。独自に保有するのは、膨大なコストを伴うし、第一、この日本のどこで核実験をしようというのか。 米国の核を在日米軍基地に配備すればいいという論もある。だが、これも受け入れる周辺住民はほとんどいないだろう。よって今の日米安保体制が機能している限り、核保有は非現実的な選択肢だということになる。 北朝鮮の核実験を機に世界各国が「もしかすると日本も」と懸念し始めているさなかに、外相や自民党の中川昭一政調会長が核に言及するのは最低の状況認識だという意見もある。 確かに政権中枢にいる政治家でありながら、その発言に戦略性や綿密さを感じさせてくれないのは何とも嘆かわしいところだ。ただ、一方では、安倍晋三首相と役割分担して「北朝鮮への脅し」に狙いがあったと見るのも可能だ。 押さえておかなくてはならないのは、この両氏も「自分は核保有に反対だが……」と言っていることだ。日本の核保有が今の日米安保の否定につながることを当然承知しているからである。 感情に走らず、理性的に今の日本が置かれている状況を見据えて、核武装は現実的でないと再確認する。そんな議論であれば意味があるということである。(論説室) 毎日新聞 2006年10月23日 |
発信箱:核を議論すること 与良正男(論説室)
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