大阪大大学院生命機能研究科(大阪府吹田市)の杉野明雄教授(62)が実験データをねつ造・改ざんし、米国の専門誌に論文投稿していた問題で、大阪大は24日、研究教育評議会を開き、杉野教授の処分を検討する。同研究科の委員会の調査で、不正が指摘された2論文8カ所のうち一部について、杉野教授は不正を認めていた。調査結果を受け、同研究科の教授会は「懲戒解雇が相当」とする処分案を決定。同案通りに最終決定すると見られる。
この問題では、今年7月、杉野教授が責任著者を務める論文にねつ造された実験データが含まれていると、共著者の同研究科助手(42)らが気付き、杉野教授に論文取り下げを要求。取り下げ後、助手らの告発を受けた同研究科の研究公正委員会(委員長・田中亀代次教授)が調査し、先月22日に結果を公表した。一方、この助手は調査中の先月1日、研究室で毒物のアジ化ナトリウムを飲み、自殺した。
同委の調査によると、不正は酵母の染色体複製にかかわるたんぱく質の機能を解析した2論文で見つかった。いずれも米国の生化学専門誌「ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー」に投稿され、今年7月に掲載された。どちらも杉野教授が責任著者を務め、著者は杉野教授を含めて5人と6人だった。
同委は、(1)共著者全員による最終原稿確認と投稿の同意の手続きを行わず、杉野教授が論文投稿した(2)2論文とも杉野教授が単独でデータのねつ造・改ざんを行った(3)不正に共著者はかかわっていない--と結論し、「共著者たちの努力とその成果を踏みにじるもの」と断じた。
阪大では昨年、医学論文のデータねつ造が発覚し、医学部調査委員会が調査。筆頭著者の学生(当時)がねつ造したと結論づけ、今年2月に同研究科などの2教授を懲戒処分(停職)にした。筆頭著者は、責任をなすりつけられ名誉を傷つけられたなどとして、2教授を相手に損害賠償請求訴訟を起こし、係争中。【根本毅】
毎日新聞 2006年10月24日