京都府長岡京市で佐々木拓夢ちゃん(3)が餓死した虐待事件で、異変に気付いた地元の自治会が今年2月から拓夢ちゃん宅の見守り活動を行っていたことが23日、わかった。自治会と連携した民生委員から府京都児童相談所(京都市)に、拓夢ちゃんに関する情報が6月以降、3回にわたり計5件伝えられたが、相談所は、父親の運送業、佐々木貴正容疑者(28)=保護責任者遺棄致死容疑で逮捕=と電話で話したものの訪問調査はせず、介入の必要なしと判断。黒川洋一所長は「判断に甘さがあった」と不十分な対応を認めた。自治会関係者からは「助ける機会があったのに」と無念の声が上がっている。
同相談所によると、拓夢ちゃんの姉(6)については3月8日、「体罰や食事制限を受けているようだ」と民生委員から連絡があり、同9日に長女が通っていた幼稚園を児相職員が調査。同28日午前1時ごろ、長女はパジャマ姿で路上にいるところを発見され、同相談所が保護した。
拓夢ちゃんについては、6月20日に「6月10~14日の間に3回、家を出て帰りたくないと泣くなどした」▽9月24日「あまり外に出ていない」▽10月16日「夜10時ごろ、しかられて泣いている」などと民生委員から連絡があった。
相談所の担当者はその都度、佐々木容疑者に電話し、介入する必要はないと判断。10月16日の電話で、佐々木容疑者が「継母は体調が悪いので、明日病院に連れていく」と説明し、同相談所は「入院すれば拓夢ちゃんは預かる」と話していた。
一方、地元の西の京自治会長の永井眞由さん(66)によると、今年2月、姉がトイレの窓から「おなかすいた」と訴える姿を住民が目撃。永井さんらは虐待の可能性があるとみて地区担当者らと協議し、地域住民で姉弟を見守ることを決めた。
佐々木容疑者は自治会に入っておらず、詳しい状況を把握できなかったが、住民が自宅周辺を巡回。拓夢ちゃんの泣き声がしたり、姿を見かけない時などに民生委員が同相談所に通報していた。
永井さんは、「児童相談所で預かると聞いていたので、『安心して下さい』と近所の人に伝えたばかりだったのに」と肩を落とした。【椋田佳代、鶴谷真】
毎日新聞 2006年10月24日