京都府長岡京市で3歳男児が餓死した虐待事件で、府京都児童相談所(京都市)が「夜中に泣き声が聞こえる」などという民生委員からの連絡を、児童虐待防止法に基づく「通告」ではなく、「報告」として処理していたことが分かった。児相は子どもの安全を確認する必要のある場合の「通告」とすべきだったと誤りを認め「今年3月に保護した姉(6)を家庭に戻すため父親との信頼関係を築くことを重視していた。関係を壊したくなかったので決断が鈍った」としている。
また、拓夢ちゃんに関する民生委員からの最初の連絡が5月17日だったことも分かった。これまでは、6月20日が最初とされていた。
「通告」「報告」の判断は児相が行う。拓夢ちゃんの場合は、6月20日に「暗い家の中に残されたまま父母が外出し、泣いていた」と連絡を受けたが、翌21日に拓夢ちゃんと面会し、「虐待の兆候がまったく見られなかった」と判断。家族が姉を受け入れることを第一と考え、「報告」として処理した。
5月の連絡は、拓夢ちゃんが1人で自宅近くを歩いていたため、近所の人が家に招いて一緒に過ごした後、「ママのところに帰る」と話したため、自宅まで送ったという内容だった。また、9、10月の連絡では、電話で父親の佐々木貴正容疑者(28)=保護責任者遺棄致死容疑で逮捕=に拓夢ちゃんの様子を確認しただけだった。
一方、佐々木容疑者が「(拓夢ちゃんに)甘えてほしくない。長女は甘やかして育てた。子どもが甘えてくると、甘やかしてしまう」と供述していることも分かった。拓夢ちゃんの衰弱した様子については、「まじまじと見たりしたことはない」などと話しているという。
佐々木容疑者は「父親は子どもより上の立場にいることを示さないといけない」とも話し、子どもにはほとんど構わなかったという。また、しつけと称して食事を抜くことには合意していたものの、「殴ったことはない」と供述している。【谷田朋美】
毎日新聞 2006年10月25日