大丸と松坂屋ホールディングスが経営統合の協議を本格化させている背景には、専門店の攻勢やインターネット販売の急増に押され、百貨店の売り上げ減少に歯止めがかからないことに対する危機感がある。
全国百貨店の売上高は06年、前年比0.7%減の7兆7700億円と、10年連続マイナスだった。多様化が進む消費者の要求に対応しきれず、百貨店の存在感が低下しているのが原因だ。
また、景気の回復基調が伝えられるなか、消費の弱さは依然として払しょくされていない。さらに、地方では少子高齢化で消費市場が縮小していく不安を抱える。東京一極集中が加速し、大阪を地盤とする大丸、名古屋に本拠地を置く松坂屋の危機感は強い。
競争の激しい小売業界で生き残るには、一層の経費削減と、既存店の魅力を高める改装や増床が欠かせない。多額の投資を必要とする銀座店の建て替え計画を抱える松坂屋にとって、販売力と財務基盤の双方を強化できる今回の統合交渉は利点が見込める。大丸も統合すれば目標の売上高1兆円を超え、成長戦略を加速できる。
ただ、百貨店はスーパーマーケットや大規模専門店に比べ、規模による仕入れ価格の削減が難しいとされる。老舗企業同士のプライドが障害になり、新しい戦略が描けなければ統合交渉は絵に描いたもちになりかねない。【前川雅俊】
毎日新聞 2007年2月17日 11時11分 (最終更新時間 2月17日 11時35分)