高知空港で13日、全日本空輸のボンバルディアDHC8-Q400型機の前脚が下りなくなり、主車輪だけで着陸する事故が起きた。テレビが一部始終を現場から生中継し、多くの市民が見守る中での胴体着陸劇だったが、全員無事で、機内も比較的平穏だったという。機長や客室乗務員、乗客の冷静な対応を称賛したい。
天候の良さや滑走路の余裕など条件に恵まれたことも幸いした。だが、一歩誤れば、大惨事になっていたことは間違いなく、看過できない事態である。
全日空と国土交通省は徹底的に原因を調査し、空の安全が再び脅かされることのないよう、対策を講じなければならない。
事故機はカナダの航空機メーカー、ボンバルディア社が近距離路線用に開発し、高速、低騒音、低コストを売り物に、世界中で100機以上が使われている。日本でも国産機YS11の後継機として、複数の航空会社が西日本のローカル路線を中心に導入した。
だが、日本では導入直後から機器の故障や誤作動が相次ぎ、全日空グループだけでも、04年6月から現在まで計44件のトラブルが確認されている。
昨年2月には、全日空機の前主脚車輪3本すべてが自動で下りなくなって、手動で脚を下ろして松山空港に着陸した。今回は機長が手動に切り替えたり、着地のショックを与えてみても前脚が下りなかったといい、トラブルの度合いはより深刻だ。
専門家は現段階で、前脚を下ろす油圧系統やロック機構の故障が直接の原因とみている。今回の事故機は今年1月にも貨物室のドアロックの不正常を示すライトが点灯し、大阪空港に引き返すトラブルを起こしている。事故機の使用開始は05年7月からだから、老朽化や酷使が引き金とは考えにくい。
同型機にこれほど故障が絶えないのは、機体の設計や製造工程そのものに問題があるのではないかとの疑問も生じる。
国交省は昨年4月、ボンバルディア社とカナダ政府に設計上の改善をするよう要求している。メーカーでどのような改修、改善が行われたのか。航空会社側の整備や点検の方法はどう改められたのか。きちんとデータを開示し、検証してみる必要がある。
今回のトラブルを受け、国交省は全日空グループと日本航空グループの同型機計22機について前脚の作動状況の緊急点検を求めた。
ことは人命にかかわる重大な問題だ。事故にはならなくても飛行中のUターンや遅延、欠航が重なれば、乗客の時間的、経済的損失も極めて大きい。
対症療法に終わらせず、ボンバルディア社の製造工程や、同型機を使用するすべての航空会社の整備・運航状況まで徹底的に見直すべきだ。
安全が確保されるまでは、同型機の使用を全面的に見合わせるくらいの厳しい姿勢で調査を尽くすことが不可欠である。
毎日新聞 2007年3月14日 0時08分