西武の裏金問題で揺れる日本プロ野球組織(NPB)は21日、都内で西武を除く11球団による代表者会議を開催。不正の温床と指摘された「希望入団枠」を来年、08年から撤廃としたが、今秋ドラフトの実施方法は継続審議することを決めた。この結果、今年は暫定的に現行制度を維持。希望枠が残る可能性が高まったことについて、アマ側はプロ側の決定を拒絶。今秋ドラフト拒否も示唆するなど、態度を硬化させた。
時計の針は午後6時半を回っていた。会議開始から7時間半余り。激しい議論の末、「希望入団枠」をなくすことはできなかった。
「来年から本格的な制度を策定する」。会見に臨んだ根来コミッショナー代行が説明した通り、撤廃されるのは来年のドラフトから。今秋については「時間切れになるのではないか。もし間に合えば、今年から撤廃となる可能性もゼロではない」とどこまでも歯切れが悪かった。会議は撤廃に積極的だった8球団に対し、消極的な巨人が強く主張して紛糾。結局、暫定的に現行制度を維持する方向が強まった。
不可解な結論。アマ側はすぐさま反発した。午後7時すぎにコミッショナー側から電話で説明を受けた日本野球連盟、日本学生野球協会、日本高野連は、いずれもこの決定を受け入れられない旨を通達。日本野球連盟・鈴木副会長が「中途半端な決定で残念。世論が許さないだろう」と語気を強めれば、日本学生野球協会・内藤事務局長も「今年から撤廃されると思っていたので驚いているし失望した」と続けた。
アマ3団体の幹部は相互に連絡して意見を統一。大阪市内で記者会見した日本高野連・田名部参事は「今回の決定は断じて受け入れられない」とプロ側を痛烈批判した。「開いた口がふさがらない。プロの新人獲得制度はアマの協力なしではできないことが分かっていないのでは」。コミッショナー側の説明が要領を得なかったこともあって怒りは頂点に達した。
プロ側の要望で開催された16日のプロ・アマ意見交換会はアマ3団体の代表者が出席。アマの総意として「球界の浄化のため希望枠撤廃」を求めた。その要望を袖にされたのだから無理もない。04年1月28日に当時の川島コミッショナーと交わした覚書には「ドラフト制度を変更する場合は日本高野連の同意を求める」とある。その効力は今も有効との判断で、アマの同意がないままの「枠存続」に田名部参事は「それに抵触する」とも指摘した。
アマ側は再度、希望枠の撤廃を求めていく方針を確認したが、撤廃されない場合はプロ・アマの交流を一切凍結させる可能性もあるという。現在はプロOBの母校での練習が認められ、高校球児への現役プロによるシンポジウムも実施。それら交流がすべて凍結されれば8月、プレ五輪(北京)に臨む星野ジャパンへのアマ選手派遣も見送られる。田名部参事は「今秋ドラフト拒否?その思いでプロ側に当たっていかないといけないでしょうね」と言い切った。
来年では遅い。希望枠存続ならプロ・アマ断絶に逆戻りという最悪の結末が待っている。