今回の代表者会議で、日本プロ野球組織(NPB)は今年の希望入団枠撤廃を打ち出せなかった。FA短縮で譲らない巨人の強硬姿勢と“巨人寄り”とも指摘される根来泰周コミッショナー代行(74)の仲裁案で紛糾した。実に7時間半に及んだ会議の内情はどうだったのか。
希望入団枠撤廃の条件で巨人がFA取得年限の大幅短縮(現行9年→5~6年)で譲らない。こう着状態に「多数決を採ろう」との提案が出た。
野球協約上、重要事項の決議には4分の3以上の賛成が必要。この日は議決機関の実行委員会ではないが、巨人と中間派のソフトバンクと広島を除く8球団が「即時枠撤廃」を主張。採決すれば押し切れただろう。
その時だった。根来コミッショナー代行の「意見」が記された紙2枚が配られた。1枚目に「希望枠撤廃はFA短縮が不可避」との理念、2枚目に「FA年数は7年。段階的に移行」との試案。巨人・清武代表が「コミッショナー裁定は重い」と7年で同調した。
ある首脳は「あれで会議は紛糾した」と言う。「現行9年から1年短縮なら応じられるが2年だと反対が多い」。FA市場拡大での年俸高騰や主力級を早くに失う不安は、パを中心に多くの球団が抱いた。根来代行の仲裁案が混乱を招いた。
批判を受けても仕方のない言動があった。NPBは裏金問題の表面化で一度合意した現行維持を白紙撤回。その後、根来代行は巨人・滝鼻オーナー、渡辺球団会長と会食し、清武代表から説明も受けていた。根来代行も会見前後で「汚れ役だ」と覚悟していた。
それでも「世間の風や勢いに流されて理屈を見失ってはいけない。来年3月まで審議を続け、今年は暫定的に従来方式でどうか」と今年の希望枠存続やむなしの姿勢を示した。
海外流出や指名拒否を憂う巨人の論理は一理ある。FA市場で主力級をあさる思惑とも取られかねない。確かに枠廃止で「FA短縮は困る」とする球団は姿勢が問われる。だが何もすぐ完全な制度を作れなくていい。枠撤廃で合意したのだ。まずは打ち出し、FAなど細部は徐々に改定していけばいいではないか。
会議の最後には多くの球団が「きょうは内容を公表しよう」と普段のかん口令を拒んだ。巨人のあまりの強引さを浮き彫りとする声が相次いだ。