政府の社会保障国民会議の中間報告は増税の必要性とともに、税財源を医療・介護に投入すべきだと示唆している。年金制度については未納対策を中心とした修正にとどめ、主要財源に保険料を充てる社会保険方式を維持する意向をにじませた。全文をかみ砕けば、「全額税でまかなう税方式にすれば多額の税財源を要し、医療や介護に回すカネが枯渇する」と翻訳できそうだ。
年金制度に対する中間報告の評価は、未納問題を懸念しつつも、04年改革で決まったマクロ経済スライドによって「持続可能性が高まった」などと、総じて好意的。従来は物価が1%上がれば年金も1%増えた。しかし、少子高齢化対策の切り札として導入されたマクロ経済スライドは、物価が1%増でも年金額は0.1%しか増やさないことで、年金の実質価値が20年で15%引き下げられる。
これにより、厚生労働省は「年金財政は大丈夫」と考えている。だから、基礎年金の国庫負担割合(現行37%)を50%へ引き上げるのに必要な2.3兆円の確保が最優先。低年金者への最低保障制度は財源を得られるなら検討するが、巨額のカネがいる税方式への転換は不要--が本音で、中間報告も大筋その考えに沿っている。
それが、医療・介護分野では一転して、「財源の確保・継続的な資金投入が必要」と強調する。06年度の年金給付費は47.4兆円で医療・介護の34.1兆円を上回っているが、今後の医療費の伸びは著しく、厚労省推計によると、年金と医療・介護は25年度には65兆円ずつで肩を並べるという事情があるためだ。
そこで、中間報告は、年金は現行制度の手直しでも済むことや、税方式化には消費税を最大18%までアップさせる必要がある点を示し、限られた財源を医療・介護に振り向けるよう促している。【吉田啓志】