九州電力は26日、川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)で、原子力規制委員会の新規制基準に基づいた安全対策を報道陣に公開した。原子炉建屋内まで明らかにしたのは初めて。使用済み燃料プールに水位計を設置するなどの必要な対策はほぼ終えた。九電は重大な事故が発生した時の対応訓練を繰り返し、7月の再稼働を目指して準備を進める。
ポケットに何も入れることも許されない。厳しいセキュリティーのなか、線量計を持って進むと、原発の中心部が現れた。燃料が納められる原子炉などの重要な機器がある原子炉格納容器だ。
大地震などによる事故が発生して緊急停止に失敗した時に、水素爆発による格納容器の破損を防ぐ必要がある。格納容器には燃焼させて大量の水素を減らす装置などを1号機と2号機合わせて18台ずつ配備した。
九電は川内原発を襲う最大の揺れの想定を旧基準下の400ガルから620ガルまで引き上げた。タービンを回す蒸気を発生させる装置につながるパイプを支える鉄製の器具の強度を高めるなど耐震対策を施した。
規制委は2013年7月に原発の新しい規制基準を導入した。九電はその基準に基づいた安全対策を進めてきた。原子炉建屋と隣接する燃料を取り扱う建屋には使用済み燃料プールがある。東日本大震災前までは目視で水位を確認していたが、新たに水位計をプール近くに設置して数値で計れるようにした。内部だけでなく外部からも水を供給するパイプも設置した。
東京電力福島第1原発のようにすべての電源が喪失したと想定した訓練も実施。手動で弁を開けて、建屋から蒸気を外に逃がす手順などを確認した。
保安規定が認可されれば、震災前は12人体制だった宿直体制を52人に増やす。従来は運転員のみだったが、指揮と実働を分けるなど役割に応じた手厚い配置にする。すでに認可に向けて訓練を進めている。
安全対策は竜巻対策で一部残る以外はほぼ終えた。川内原子力総合事務所の古城悟所長は、安全対策の訓練は震災後に約400回実施しているとしたうえで「世界的にも厳しい新規制基準に適合しているので十分な安心がある」と強調した。
規制委は30日から再稼働に向けた使用前検査に入り、九電のこうした安全対策を点検する。古城所長は「総点検を繰り返して再稼働に備えたい」と語った。