九州電力の川内原子力発電所1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働を巡り、鹿児島地裁(前田郁勝裁判長)が22日、住民らが求めた運転差し止め仮処分に対する決定を出す。福井地裁が14日に関西電力高浜原発(福井県)の再稼働を認めない仮処分決定を出したばかりで、鹿児島地裁の判断が注目される。
鹿児島地裁への再稼働差し止め仮処分は、運転差し止めを求めている訴訟の原告の一部住民が昨年5月に申し立てた。
最大の争点は、川内原発の地震対策が妥当かどうかだ。2011年の福島第1原発事故を受け、原発の新規制基準が策定された。九電は、耐震設計で想定する最大の揺れの強さである基準地震動を540ガル(ガルは加速度の単位)から最大620ガルに引き上げ、原子力規制委員会の審査に合格した。
仮処分の審尋で住民側は「基準地震動は少ないデータを活用し、過去の揺れの平均値に基づくものでしかない」と主張。05年以降に国内4原発で基準地震動を超える地震が5回観測されたことを挙げ「想定を超える地震は起こり得るため620ガルは過小評価。巨大地震により炉心溶融などの危険がある」としている。
一方、九電側は「川内原発は南海トラフなどの震源から離れており、基準地震動を超える地震の可能性は低い。仮に起きた場合でも建物の耐震設計に余裕がある」と反論。福島第1原発で冷却設備などが壊れた教訓を踏まえ「非常用電源や注水設備を配備して安全対策を拡充した。放射性物質が大量放出する危険性はない」と主張した。
第2の争点は火山対策だ。原発の周辺にある5つの火山が大規模な噴火(破局的噴火)を起こす可能性について、住民側は「多くの学者が噴火時期の予測は困難と指摘しており危険だ」と指摘。九電は「周辺の火山は破局的噴火の周期が約9万年のため、発生の可能性は低い」と反論した。
また、緊急時の避難計画について、住民側は「避難用のバスなどが足りず、実効性に乏しい」とし、九電側は「自治体が具体的な計画を策定している」と主張した。