札幌出身の洋画家、三岸好太郎(1903~34年)が25歳前後に描き、所在不明だった「大沼風景」の可能性がある油絵が札幌市内の個人宅で見つかった。31歳で病死した三岸の油絵は200点余りしか現存が確認されていないといい、関係者は「作風の変化を知る上で貴重な発見だ」と話している。
絵の所有者は同市清田区の療術師、大森明さん(66)。昨年6月に他の三岸作品がテレビで紹介されているのを見て、自宅にしまってあった絵を思い出した。もともとは父か、三岸と親しかった画家で歯科医の伯父のものとみられるという。
絵は縦33.5センチ、横45.5センチ。雄大な山を背景に水辺や小島が描かれている。サインはなかったが、三岸の孫で幼いころから作品に親しみ、東京都内で画廊を営む三岸太郎さん(54)が鑑定し、色使いや筆遣いから祖父の作と判断した。本番前に練習で制作する習作の可能性もあるという。
北海道立三岸好太郎美術館(札幌市)は、北海道七飯町の大沼公園を描いた「大沼風景」か、その習作ではないか、とみる。大沼風景は28年に札幌の展覧会に出展されたが、後に所在不明になった。
福地大輔学芸員(43)は三岸が約10年間の短い画業の中でめまぐるしく画風を変えたことを挙げ「27~28年ごろ、三岸は『スランプに墜(おちい)る』と書いている。今回の作品は新たな画風を模索する中で描かれたものと推測され、注目に値する。仮に習作であっても本番に至る経過が分かる資料になる」と話している。〔共同〕