【ウィーン=久門武史、川合智之】イラン核問題の包括解決を目指す米欧など6カ国は最終合意の期限としていた30日、イランへの制裁を一部緩和する現行の暫定措置を7月7日まで延長すると表明した。最終合意に向け、核交渉を最大で1週間延長できるようにするためだ。
イランに一時帰国していたザリフ外相は30日、再びウィーンに戻ってケリー米国務長官、ロシアのラブロフ外相と相次いで会談した。イランのサレヒ原子力庁長官も協議に加わった。
ザリフ氏は本国で最高指導者ハメネイ師らに状況を報告し指示を受けたとみられ、再開した外相級協議でどこまで譲歩を示すかが焦点となる。
ザリフ氏は国営テレビに「バランスの取れた合意のみが維持可能であり、さもなくばイラン国民は受け入れない」と強調した。
AP通信は交渉当事者の話として、イランが濃縮済みウランを大幅に削減することで交渉のカギとなる条件を満たしたと伝えた。決裂を避けるため、イランが歩み寄る姿勢を取り始めた可能性がある。
協議延長の目安として交渉団の念頭にあった節目が7月9日だ。米議会は核協議の合意後、30日間の審査を経て承認するかどうか判断する法律を5月に可決、成立した。同法では議会への通知が7月9日を過ぎると審査期間を60日間に延ばすと定めている。
イランとの交渉に批判的な野党・共和党は事前審査で厳しく合意内容を検討する構えで、議会の審査中は対イラン制裁を解除できない。審査の長期化は核協議に悪影響を及ぼす懸念がある。
核協議で残る大きな争点の一つが、6カ国側が求めている国際原子力機関(IAEA)によるイランの軍事施設の査察だ。過去に核兵器関連の起爆実験をした疑いがあるためだが、ハメネイ師は拒否する考えを強調している。
米政府高官は29日、イランがすべての軍事施設に立ち入りを認める必要はないと記者団に語り、譲歩を示唆した。査察に一定の制限を課すことで、イランが応じやすくする道を探っているとみられる。
イランが核開発を制限する見返りとなる制裁解除を巡っては、ハメネイ師が「合意に署名するのと同時」の解除を主張している。
イランが核開発制限を履行するのと同時に制裁の一部を解除し、一定期間内に残りの制裁も解くといった段階を踏むとの観測をイランのメディアは報じている。
今回の協議では、4月に双方が合意した「枠組み」に沿って付属文書を含む最終合意文書案の文言を調整している。
オバマ米政権は核問題の早期解決を目指しており、イランも原油価格の低迷が財政を圧迫する中で制裁解除は緊急の課題だ。双方とも核協議を決裂させるメリットはなく、互いに有利な条件を引き出そうとする駆け引きが続いている。