――物価上昇率についてどう考えるか。
「2%というのは目安で、我々がその近辺であってほしいと考える水準だ。我々は物価上昇率を2%超の水準に押し上げようとしているわけではないし(2%が)上限というわけでもない」
「ただ、政策の効果が出てくるのには時間がかかる。物価上昇率が2%程度に戻るまで待っていたら、失業率はFRBが目安とする水準を大幅に下回ってしまうだろう。そのため我々は2%という目安を(将来に)見越した状態で、非常に緩和的な政策を縮小し始めることになる。実体経済を混乱させるような政策は好ましくない」
――今回、利上げに踏み切らなかった理由は。
「世界経済の不確実性に関する様々な材料を慎重に精査するために、我々は集まっている。ただ最終的に、我々は雇用の最大化と物価上昇率を2%程度に安定させるという2つに焦点を置いている。世界経済は不確実な点が多い。経済や金融市場が我々の目標達成にどんな影響を及ぼすかという点を自問している」
――米国外の懸念材料は何か。
「世界の重要地域はすべて動向を注視している。特に中国と新興国に注目している。中国経済の減速そのものは、大きな驚きではない。問題は、予想と比べて大幅に減速するリスクがあるか、ということだ」
「8月の金融市場の動向も、中国経済の下振れや政策対応への懸念を反映したのだろう。(中国経済の懸念が強まる前に)原油価格の下落もあった。原油価格の下落は産油国の新興国や、米国の重要な貿易相手国であるカナダなどの経済に大きな影響を及ぼした。その結果、資源国から多大な資本が流出し(資源国の)通貨を押し下げもした」
「焦点は、中国を含む新興国の状況が米国にどう波及するかということだ。我々は(株式などの)相場の騰落に反応すべきではないと考えている。ただ、その市場混乱の原因を考えるのは我々の義務であり、世界経済の懸念は市場を動かす要因となっている。株式相場の下落やドル高、リスク資産の利回り上昇などをみると、金融市場はやや引き締まったようだ。とはいえ米国は順調だ。雇用創出のペースも顕著で、内需も堅調だ。それらと米国外の懸念材料とを踏まえ、総合的に判断しようとしている」
――マイナス金利の可能性も議論されたのか。
「マイナス金利(の導入)は、我々の政策の主要な選択肢の1つではなかった。物価上昇の弱さなどを懸念するメンバーが、マイナス金利導入による追加緩和を考えたが、今回の会合では議論していない。ただし、米経済の状態が、私を含む大半のメンバーの想像を大幅に上回って悪化した場合は、追加緩和へ向けて、あらゆる方策を検討する」
――年内に利上げする可能性に変化はあるか。
「私個人の見解を述べるのは控える。(これまでに)米経済がどう変化すれば年内の利上げが必要になるかといったFOMCメンバーの見解を示してきた。FOMCのメンバーが色々な材料を精査した末の見解だ」
「8月の市場混乱の主因は世界経済の先行き懸念だったと理解している。米金融政策が不透明で、本日の政策決定に非常に大きな注目を集めているのも認識している。我々は最善の分析をしようとし、見解を交わし、政策を決定している」