【シアトル=永井央紀】中国の習近平国家主席は22日、初の公式訪問となる米国へ出発した。25日のオバマ米大統領との首脳会談では南シナ海の埋め立てやサイバー攻撃などの懸案について協議する。対立を避けるために成果や融和ムードづくりにも腐心するが、中国の姿勢に対する米側の反応は硬く、「具体的な成果は期待薄」との見方が多い。
習氏は22日(日本時間23日未明)にシアトルに到着し、米企業などを視察する。ワシントンではオバマ氏との会談や記者会見、公式晩さん会に臨んだ後、26日にニューヨークへ移動して国連総会に出席。28日に演説をする予定だ。
中国は米国との「新型大国関係」を進展させたいと繰り返し主張している。冷戦時代の米ソのように対立するのではなく、相違点は対等の立場で相互に尊重しながら国際社会の問題解決に協力しようという立場だ。習氏の訪米を「信頼構築と懸念払拭の旅」と説明しつつも、この強気の外交姿勢に変化は見られない。
米国が批判する南シナ海やサイバー攻撃では譲歩せずに中国の主張を展開する構え。抜本的な解決はできず、「航行自由の原則」や「サイバー空間の安全」などの原則を確認して終わる見通しだ。6月の戦略・経済対話で最優先課題とした投資協定は、交渉の前進を確認するにとどまる公算。中国の国有企業への優遇廃止など米国が求める条件で折り合いがついていないとされる。
習氏訪米を対立色に染めたくない中国は、気候変動対策や経済面など協力しやすい分野の連携を打ち出す方針だ。8月に唐突に切り下げて混乱をもたらした人民元の扱いについては、22日の米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)の書面インタビューで「市場原理により委ねていく」と述べて懸念払拭に努めた。
対立点を解決しにくいなかで、最悪の状況を回避するための予防ルール作りも検討する。たとえば、空軍同士の偶発的な衝突を防ぐための連絡体制構築。米国は南シナ海で中国が主張する人工島から12カイリ内の「領空」に偵察機を派遣することを検討しており、不測の事態への懸念は強い。米中外交筋は「おそらく合意できる」と言う。サイバー攻撃の先制不使用に関する取り決めで合意するとの見方もある。