ウイルスが原因の血液のがん、成人T細胞白血病(ATL)の患者400人以上から採取したがん細胞のゲノム(全遺伝情報)を分析した結果、少なくとも50個の遺伝子に異常が生じていることを発見したと、京都大などのチームが米科学誌の電子版に発表した。
チームの小川誠司・京都大教授は「遺伝子異常の全体像をほぼ解明できた。発症の仕組みの解明や新たな治療薬の開発につながるかもしれない」と話している。
ATLは母乳などを通じて乳児期に成人T細胞白血病ウイルス(HTLV1)に感染したリンパ球の一種「T細胞」に、遺伝子の異常が蓄積して数十年後に発症するとされる。
チームはATL患者426人の血液などからがん化したT細胞を採取。ゲノムを調べるなどして患者に特有の遺伝子異常を約50個見つけた。患者1人当たり8~9個の遺伝子に異常があった。
90%以上の患者は異物を見分けるなどのT細胞の免疫機能に関わる遺伝子に異常があった。「PLCG1」「PRKCB」と呼ばれる酵素が働きすぎる異常が多く、酵素の働きを妨げる薬剤が治療薬となる可能性があるとしている。〔共同〕