中国でカフェチェーンの出店競争が激化している。世界最大手の米スターバックスコーヒーが海外では最大となる3400店舗を2019年までに設置する計画だ。一方、太平洋珈琲(パシフィックコーヒー)など地元勢も「お茶ラテ」といった独自メニューなどで追う。景気の減速や倹約令により高額品消費が低迷するなかで、カフェは「プチぜいたく」として若者らの支持を集める。各社は潜在需要は大きいとみて店舗展開を加速する。
パシフィックコーヒーはオフィスビル内などに積極的に出店(遼寧省大連)
「マクドナルドは落ち着かないし、テーブルも汚い。ここならゆっくりできるよ」。上海市内のIT(情報技術)企業に勤める斉鵬さん(26)は週1度、1人でスタバを訪れるのが習慣になっている。静かな空間でソファに座り、本を読みながらコーヒーを飲むのが、斉さんにとってリラックスできるひとときだ。
斉さんの月給は1万5千元(約30万円)と市内の平均月収(約5400元)を大きく上回る。カフェラテは30元前後で、軽食やクッキーなどを頼めば100元程度となり、一般的な昼食代の5倍近くになるが、「自分が満足できれば、高いとは思わない」と話す。
中国では経済成長に伴い、上海など沿岸部の主要都市では1人当たり国内総生産(GDP)が1万5千~2万ドル超と先進国並みに達する。こうしたなか、にぎやかさを好む親世代を蔑み、欧米のライフスタイルを志向する「小資(プチセレブ)」と呼ばれる若者が台頭。小資にとって、おしゃれなカフェに行くのは、ちょっとしたぜいたくの代表格となっている。
このため、カフェチェーン大手は積極的な出店攻勢に出ている。スタバは現在は約90都市で約1600店を構える同国最大級のチェーンに成長したが、大都市だけでなく地方にも出店を拡大。19年までに1800店を開き、全店舗数を3400店以上に引き上げる計画だ。1万2千店もある米国内には及ばないが、海外では最大となる。
英コスタ・コーヒーは現地企業2社との合弁で14年末時点で、計344店を展開する。中国を有望市場と位置づけており、20年には倍以上となる900店体制を築く方針だ。両社とも大都市を中心としたショッピングセンター(SC)などに集中出店するが、商業施設にとっては「客を呼べるキラーコンテンツ」(関係者)のため、誘致は引きも切らないようだ。
世界大手に対抗して積極出店するのが地元勢だ。コーヒーなど商品の価格はスタバとほぼ同じ。香港のパシフィックコーヒーは国有小売り大手の華潤万家と組み、約260店を展開する。オフィスビルの1階や病院内など人通りの多い“一等地”に出店。早期に1千店体制を築く方針だ。
パシフィックコーヒーの特徴は、カフェラテなど一般的なメニューに加え、中国の高級酒である白酒入りのコーヒーや雲南省のお茶をミルクで割った「お茶ラテ」などを用意。また、ちまきなどのフードメニューも充実した。中国の食習慣に合わせた飲み物や食べ物で、スタバでは物足りない層の獲得を目指す。
「SANA ZOAN」を約340店を展開する大陸最大手の塞納左岸国際餐飲管理(北京市)は中国の店頭取引市場への上場で得た資金で店舗網を広げる。韓国系の漫珈琲餐飲管理(北京市)は「MAAN COFFEE」ブランドで約70店を運営する。9月に北京市に開業したイオンのSC内に出店するなど沿岸部を中心に出店を加速。10年以内に3千店に広げることが目標だ。
(大連=原島大介)