ロンドンで23日、投票を終え、妻と投票所を後にするキャメロン首相=AP
英国の欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う国民投票が、23日午前7時(日本時間同日午後3時)から始まった。各社の世論調査では支持率は伯仲している。離脱となれば、28カ国まで加盟国を増やし、統合を深めてきたEUから初めて加盟国が脱退する歴史的な転換点となる。世界的な経済の混乱も懸念され、各国が結果を注視している。
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投票には、英国民に加えて、隣国アイルランドや英連邦加盟国の国籍を持つ18歳以上の英国居住者約4650万人の有権者が登録した。午後10時(日本時間24日午前6時)に締め切られ、即日開票される。日本時間の24日午後には集計結果が発表される見通し。
最終盤の各社の世論調査では、残留・離脱の支持率が拮抗(きっこう)し、国論を二分している。先週半ばまで離脱派が優勢だったが、16日に残留支持の女性下院議員の射殺事件が起きた後、残留派がやや巻き返した。
離脱派は、移民の流入が雇用などの面で英国社会を脅かすと主張。制限するにはEU脱退が欠かせないとして、「主権を取り戻せ」と呼びかけた。製造業の衰退やEU官僚への反発を背景に、人々の不満を吸収した。旗振り役は、保守党の次期首相候補と呼ばれるボリス・ジョンソン前ロンドン市長だ。
一方の残留派は、離脱による経済的なリスクを訴えてきた。約5億人規模のEUの単一市場へのアクセスが失われ、金融街シティーなどへの国外からの投資が減ると主張。財政負担や増税は避けられず、将来世代への負担増につながると警告してきた。デービッド・キャメロン首相とともに、日米独など各国首脳も残留を呼びかけた。
一方、金融市場では、残留派が優勢との見方が広がり、英通貨ポンドや欧州共通通貨ユーロが買い戻され、株価も上がった。
23日の外国為替市場では、ポンドはドルに対し一時1ポンド=1・49ドル台半ばをつけ、昨年12月以来、約半年ぶりのポンド高水準をつけた。円に対してもポンドやユーロが値上がりし、一時1ポンド=158円台前半、1ユーロ=120円台後半をつけ、それぞれ今月上旬の円安水準に戻した。対ドルでも一時、約1週間ぶりの円安水準となる1ドル=106円台前半をつけた。欧州の株式市場も好感し、英独仏など各国の株価指数は上昇して取引が始まった。
東京市場では、円安が進んだことで日経平均株価は2営業日ぶりに値上がりし、終値は前日より172円63銭(1・07%)高い1万6238円35銭だった。24日は主要市場の中で東京が最初に開く。開票結果次第で市場が混乱する可能性もある。(高久潤=ロンドン、土居新平)