災害翌日も停電した庁舎で対応に追われる町職員=8月31日、岩手県岩泉町役場、星乃勇介撮影
8月末の豪雨災害で19人が死亡した岩手県岩泉町。台風が上陸した日、防災の司令塔となるはずの町役場は、鳴り続ける電話対応に忙殺されて機能不全に陥っていた。1カ月前のあの日、役場で何が起きていたのか。町の検証作業で判明した事実から再現する。
■夕方から事態急変
8月30日、人口約1万人の岩泉町は未明から雨が降っていた。町役場の職員は189人。午前9時、全域の約4600世帯に避難準備情報を発令し、6カ所に避難所を開いた。防災業務を担うのは総務課。職員13人のうち総務課長以下5人が実務を担っていた。早朝から全世帯に、防災情報を文字で発信する電話型端末で氾濫(はんらん)の危険性を伝えた。「浸水の危険のある地域にお住まいの方は早めの避難行動を取ってください」
午後2時前、北部の安家(あっか)川が氾濫しそうだとの情報が支所職員から寄せられた。町は安家地区133世帯に避難勧告を発令した。
午後3時すぎ、雨の勢いが一時弱まった。午後4時半ごろ、高齢者グループホーム「楽(ら)ん楽(ら)ん」にも職員が様子を見に訪れていた。近くを流れる小本(おもと)川の水位は1メートルほど。堤防の高さは4・87メートルあった。
状況はこの後急変する。雨が急激に強く降り出したのだ。総務課には支部職員から「水が住宅の前まで来ている」などの情報が寄せられた。町民からも「土囊(どのう)がほしい」などの要望が次々と電話で寄せられた。
電話は午後5時以降、ひっきり…