地図ソフト「カシミール3D」で作製した、東部湯の丸SAからの山岳展望図=田代博さん提供
槍ケ岳の北に穂高連峰? 美しい山岳展望が楽しめる、長野県東御市にある上信越道下り線の東部湯の丸サービスエリア(SA)。このSAの展望板に、燕(つばくろ)岳から大天井(おてんしょう)岳への稜線(りょうせん)を「穂高連峰」とする誤表示が、20年間も放置されていることが分かった。道路と施設を管理する東日本高速道路も誤りを認め、近く、この展望板を撤去する。
山の日特集 日本の屋根信州
上田盆地を眼下に、西南方向に遠く北アルプスから蓼科山、八ケ岳、奥秩父までを見渡せる同SAの西側の一角。旧日本道路公団が1996年に建てた「高速道路六千キロ開通記念碑」のある広場に展望板はある。
ステンレス製で、山並みの線画の上に山名と標高が刻んである。この位置から見える山を特定する「山座同定」の基準になる独鈷山(どっこさん)や蓼科山を基に実景と比べると、「大天井岳から燕岳までの山域」が、明神岳から北穂高岳までの「穂高連峰」と誤記されている。
広場からの穂高連峰の展望は、手前に見える山並みに隠れているが、山岳展望に詳しい人なら、手前の山並みの尾根のくぼんだ部分から顔をのぞかせる鋭い穂先の槍ケ岳を見逃さないだろう。穂高連峰は槍ケ岳の南側にある。さらに、「針木岳」と示されている表示も「鹿島槍ケ岳」の誤りだ。
山岳展望に詳しい地理学者で、日本地図センター常務理事の田代博さん(66)=横浜市旭区=は「山岳県・信州にある山岳展望図として残念。簡単な操作で山岳展望図を描けるパソコンソフトもある時代に、なぜ、こんな間違いが起こったのか」と指摘する。
展望板設置について、東日本高速道路関東支社の広報課は「分割民営化前で、20年以上前のこと。当時を知る職員がおらず、どんな経緯で設けたのかは分からない。20年間もとんちんかんな表示に気付かず申し訳ない」と話す。
これまで、誤記についての苦情や指摘は寄せられていないという。(三浦亘)