民進党の山尾志桜里衆院議員=角野貴之撮影
地方自治体の首長や国会議員として活動する女性政治家たちがいる。彼女たちは何を目指して政治の世界に飛び込んだのか。
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■民進党前政調会長・山尾志桜里(しおり)さん
2009年に初当選した頃、女性としてのハンディをほとんど感じませんでしたが、11年に子どもが生まれ、翌年の衆院選で初めて「ハードだな」と感じました。世襲ではない普通の女性として、母親として、議員を続ける姿を示さなきゃと思っていましたが、落選しました。悔しかった。
「普通の女性の声を誰が届けるのよ」っていう思いがあったから、14年に国会に戻った時、強く自分の任務を自覚しました。不妊治療の女性の声、がんの治療で髪を失っても働く女性の声。世の中は女性にしか伝えられない声であふれている。そのことに自覚的になり、議員としての受け止め方が変わった。
「保育園落ちた」ブログを国会で最初に安倍晋三首相に質問した後、首相を核心に引っ張り込むことができなかった自分の質問力に不満でした。
でも、社会の反応は違った。首相の冷淡な物言いが女性の怒りに火をつけ、化学反応が起きた。野党でも本当に現実味のある声とつながれば、社会や政治に影響を与えることができるんだという実感を得ました。
なぜ政治が待機児童問題に向き合わなかったかといえば、政治家と子育て世代が、お互いに無関心だと思い込んでいるからではないでしょうか。そこに一石を投じることができたとは思いますが、まだまだ様々な受け皿から「落ちた」人たちがいます。だからこそ、例えば男女の候補者数の均等を求める法案には意義があります。
どぶ板選挙のような量の勝負ではなく、政策の勝負に変われば、ようやく女性が当選しやすい社会になると思います。選挙制度の転換も必要でしょう。
男性の方がロマンだとか「べき論」にとらわれている気がします。今ほど政治の世界に女性が求められている時代はないと思いますね。
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1974年生まれ。民進党前政調会長。検事をへて、2009年衆院選で愛知7区から初当選。現在2期目。家族は夫と長男。
■大津市長・越直美(なおみ)さん
市長になる前、米国の弁護士事務所で働いていました。同僚の男性から「1年間育児のため休業するから仕事をよろしく」と言われ、驚きました。海外に出て、改めて「日本は女性が生きづらい社会だ」と感じました。
女性が仕事か育児かの二者択一を迫られず、自由に選択できる社会にしたい。それが市長を目指した動機の一つでした。
初当選した当時、大津市の待機児童は約150人。3年でゼロにするため、約1500人分の受け皿をつくりました。一方で、高齢者の祝い金や鍼灸(しんきゅう)マッサージの補助金を削減しました。批判はありましたが、お金の使い方を変えることができるのは市長しかいない。市長の魅力は決められることと、実行した政策への身近な反応があることだと思うんです。
市内の中学生がいじめで自殺した問題にも向き合いました。第三者による調査を行い、結果を公表しました。中立公正な調査をして事実を明らかにすることが大事だと考えたからです。
最初の選挙の時、「若い女性は頼りないとみられるから選挙戦でマイナスだ」と言われました。実際には、有権者から「女性だからダメ」という偏見は感じなかった。むしろ当選後に年上の職員から声を荒らげられたり、机をたたかれたりしました。当時は差別だと思わなかったけれど、今思えば根底に差別意識があったのかも。若いことも、女性であることも、私の要素。そういう自分だからこそわかることがあります。
全国に女性市区長は18人しかいません。私も立候補するか、本当に迷いました。とても勇気がいります。でも、「自分にしかできないことをやるべきだ」という当時の友人の言葉に背中を押され、ここまでやってきた。女性の政治リーダーがどんどん出てきてほしいと思っています。
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1975年生まれ。弁護士として日米で活動。2012年、全国最年少の女性市長として初当選、現在2期目。両親、愛犬と暮らす。
■WLB推進を掲げる女性首長も
地方自治体に占める女性首長の割合は、まだまだ少ないのが実情だ。都道府県知事は3人で、全知事に占める割合は6・4%。内閣府によると16年4月現在、市区長は18人(全体の2・2%)、町村長は5人(同0・5%)にすぎない。
女性政策の充実を柱に据える首長も少なくなく、子育てや介護をしやすい社会を目指すためのワーク・ライフ・バランス推進などを掲げる。
東京都の小池百合子知事は、全管理職に子育てする部下を応援する「イクボス」宣言をさせた。待機児童対策として保育士の家賃補助を上乗せしている。
吉村美栄子知事のいる山形県では、県がNPOに委託して働き方のコンサルティング事業に取り組んでいるほか、待機児童対策として保育士確保のため市町村を補助。大津市の越直美市長も「女性力室」を設置した。(三輪さち子、奥令)