氷上でシタールを奏でるミュージシャン=21日、南極、板垣麻衣子撮影
南極の氷の上で、初めての国際芸術祭「南極ビエンナーレ」が開かれている。観客はいないものの、国境がない土地で、国や民族を超えた理念の大切さをアピールする狙いだ。
特集:南極観測60年
ロシアや日本、ドイツ、アルゼンチンなど13カ国のアーティストや思想家、科学者ら77人が同じ船に乗り込み、17日にアルゼンチン最南端の町ウシュアイアを出航。10日間にわたって南極近海をクルーズしながら時折接岸し、美術作品を仮設展示する。21日に南極に初上陸し、プロジェクターで氷壁に映像作品を映し出したり、インスタレーション(空間芸術)を展示したりしている。
芸術祭は、海や島、船をモチーフに創作活動をしているロシアの現代美術家、アレクサンドル・ポノマリョフさん(59)が「地球上で誰にも属していない南極は、新しいことを始めるのにふさわしい場所。現代美術には、国民国家で分断している世界をひとつにする力がある」と企画。「長年の夢がかなって本当にうれしい。素晴らしい景色と芸術家たち、清浄な空気にインスピレーションをもらっている」と話す。
船内で参加者は、作品を制作したり、自然と人間の関わりや芸術の社会的使命などについて議論を交わしたりしている。船は28日にアルゼンチンに帰港し、持ち帰った作品は今後世界各地を巡回する予定。朝日新聞社は国内唯一のメディア・パートナーを務めている。(南極=板垣麻衣子)