無罪を訴え続けてきた煙石博さん=7日、広島市中区
2012年に銀行内に置き忘れてあった封筒の現金を盗んだとして、窃盗罪に問われた元中国放送アナウンサーの煙石博(えんせきひろし)さん(70)の上告審判決で、最高裁第二小法廷(鬼丸かおる裁判長)は10日、懲役1年執行猶予3年とした一、二審判決を破棄し、無罪を言い渡した。
煙石さんは広島市内の銀行で、記帳台に置き忘れてあった封筒から現金約6万7千円を抜き取ったとして逮捕、起訴された。煙石さんは取り調べ段階から一貫して無罪を主張。だが一、二審判決は、記帳台に近づいたのは煙石さんだけだとして有罪とした。
先月17日に最高裁であった弁論で、弁護側は「封筒にはそもそも現金は入っていなかった可能性がある。客観的な証拠がないのに有罪とした一、二審判決は『推定無罪』の原則に反し、破棄すべきだ」と訴えていた。
最高裁によると、07年以降の過去10年間で、最高裁が下級審の有罪判決を破棄して、差し戻さずに無罪としたのは11人という。(千葉雄高)