米財務省は14日、トランプ政権下で初めての外国為替報告書を公表し、中国を「為替操作国」に認定することを見送った。トランプ大統領は「就任初日に中国を為替操作国に指定する」と公約していたが、正式に撤回した形だ。ただ、中国や日本は前回同様「監視リスト」に入れ、動向を注視する姿勢を示した。
トランプ氏は12日の米紙のインタビューで「中国は為替操作国ではない」として、再三にわたり主張した公約を撤回していた。
報告書では、為替操作国を認定するため、オバマ前政権下で導入した三つの基準すべてに該当する国はなかったとした。一方、日本、中国、韓国、台湾、ドイツ、スイスは、昨年10月の前回報告書と同様、「監視リスト」に入れた。
従来は、三つのうち二つの基準を2回連続で満たさない場合は監視リストから外れたが、今回、「米国全体の貿易赤字の大きな割合を占める主要貿易相手国」はリストに残すよう基準が変更された。米国最大の貿易赤字相手国である中国は、前回に続き一つの基準しか満たしていないが、リストに残された。
報告書は、中国について「為替政策で世界の貿易システムをゆがめ、米国の労働者や企業に相当な苦悩を与えた」と指摘。「輸入品の参入を制限している」として、一層の市場開放を求めた。ただ「最近の為替介入は、米国などに悪影響を与える人民元の急速な『下落』を防ぐためのものだ」として、一定の理解も示した。
中国に次ぐ2番目の貿易赤字相手国の日本については、「継続的な貿易不均衡を懸念している」と指摘。不均衡の是正に向け、国内需要を活性化するため、金融、財政政策に加え、生産性の向上につながる構造改革の推進を求めた。
報告書は冒頭で「この政権は、米国の労働者や企業が公平な条件で競争できることに高い優先度を置いている」とし、貿易赤字を問題視するトランプ政権の姿勢を改めて示した。(ワシントン=五十嵐大介)
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〈外国為替報告書〉 米財務省が、主要貿易相手国が意図的に為替操作をしていないかを調べ、半年に1度議会に提出する報告書。昨年4月の公表分から、①対米貿易黒字が200億ドル(約2・2兆円)以上②経常黒字が国内総生産(GDP)の3%以上③為替介入の規模がGDPの2%以上――の三つを満たした国に対し、対抗措置を取る制度を導入した。三つのうち二つの基準に抵触した国を「監視リスト」に指定している。