パックご飯を利用したうなぎ牛肉飯。上海の和食レストラン「サンウィズアクア」が3月のフェアで提供した=冨名腰隆撮影
農林水産物の輸出拡大で旗を振る政府が、中国向けにパックご飯の市場開拓を進めている。ハードルが高い精米輸出の拡大に向け地平を開く役割を持たせながら、食の安心・安全や手軽さを武器に巨大市場への売り込みを図る。ただ、価格面や味など課題も多い。
5月下旬、上海市内の百貨店内にある食堂で、日本産パックご飯の販売促進イベントが開かれた。集まった中国メディアや関係者を前に農林水産省の井上宏司食料産業局長が「味はもちろんだが、日本産は安心で安全。子を思う親心に国境はない」とアピールした。
農水省の支援で輸出促進団体が1月下旬~3月、中国人訪日客を対象にJR東京駅近くの商業ビルや成田空港、関西空港などでパックご飯を無料配布。中国・北京や広州などでも実施し、計10万食を配った。今年度は、北京や上海など中国5都市の百貨店やコンビニエンスストアで促進販売し、クルーズ船旅行客へのPR活動も実施する。
猛烈なキャンペーン攻勢の背景には、パックご飯の中国輸出に込められた二つの戦略的な意図がある。
一つは、小泉政権以来、日本が掲げる「攻めの農業」のさらなる前進だ。政府は、農林水産物と食品を合わせた輸出額を2012年の4500億円から19年までに1兆円に増やす方針だ。コメとコメ加工品は、うち600億円を占める。
本気度は人事にも表れている。政府は昨年、農水省の輸出戦略を担う食料産業局のトップに、経済産業省出身の井上氏を充てた。両省にとって、初の局長級の交流人事だ。
もう一つは、日本の人口減少やコメ離れにより起きる「コメ余り」への対応だ。農水省によると、主食用米の需要量は766万トン(15年7月~16年6月)で、毎年約8万トンずつ減る傾向にある。政府主導でコメの生産量を抑えてきた「減反」政策は18年度に廃止される。輸出に活路を見いだそうとしたとき、13億人超の人口大国で、南部地域でコメを主食とする中国は、外すことのできない巨大市場というわけだ。
農水省関係者は「爆買いブームの時は炊飯器が飛ぶように売れた。おいしい日本のコメを食べたいという需要も必ずある」とみる。
ただ、中国自体が世界最大のコ…