山県亮太(セイコー)
陸上の第102回日本選手権は22日から3日間、山口・維新みらいふスタジアムで開催される。日本選手権が山口で開催されるのは初めて。大会は8月のジャカルタアジア大会の代表選考会を兼ねる。注目の男子100メートルは、昨年9秒98の日本記録をマークした桐生祥秀(日本生命)を軸に、今季、安定した走りを見せている山県亮太(セイコー)、10秒08の自己記録を持つケンブリッジ飛鳥(ナイキ)らが2枠のアジア大会代表をめざす。
昨年、100、200メートルの2冠に輝いたサニブラウン・ハキーム(米フロリダ大)が右足の故障で欠場するなか、勝負の行方は、山県が5年ぶりの頂点に最も近い。
山県は昨秋10秒00の日本歴代2位タイの記録をマーク。今季のベストは、3日の布勢スプリントで出した10秒12だ。ケンブリッジと3度、桐生と1度同走したのを含め、今季は日本選手に一度も負けていないのも強み。「100%のレースはできていない中で、日本選手に負けていないのは自信になる」と山県。昨年は右足首のけがもあって6位に沈み、世界選手権(ロンドン)の代表を逃した。「言葉が月並みだが、リベンジをめざす。しっかり、代表に返り咲きたい」
桐生も上り調子だ。10日にストックホルムで10秒15の今季ベストをたたき出した。今年は200メートルにも初めて出場する予定で、第2日の23日は200メートルの予選と100メートルの決勝を走ることになる。本人は「100も200も走って、それでも体力のもつ選手になりたい」と話す。こうした取り組みができるのも、昨年、ほかの選手に先んじて9秒台を出したから。「余裕ではないが、今年は挑戦ができる。やはり昨年までは9秒台を誰が一番最初に出すかは気になっていたので」
ケンブリッジは今季、山県と並ぶ10秒12を布勢スプリントの予選で出した。この時の走りは中盤以降のスムーズな加速が見られたが、決勝では記録を落とし、まだムラがある。「早くトップスピードに乗せようとして体を起こすのが早かったり、無駄な力が入ったりしている」とケンブリッジ。スタートでリードを奪われても、力まない走りが2年ぶりの日本選手権優勝への鍵になる。
やや残念なのが、昨年10秒07をマークして一躍脚光を浴びた多田修平(関学大)が今季は不調なことだ。「今の状態だと何本走ってもキレは戻らない」と自信を失っているところも気になる。
日本選手権で100メートルの日本記録が出たのは、1998年に伊東浩司がマークした10秒08(タイ)が最後。当日のコンディションにもよるが、「記録より勝負」の傾向が強いだけに、今回は10秒0台での決着か。男子100メートルは予選、準決勝が22日に、決勝は23日午後8時35分スタート予定。
他の種目も日本記録に期待
22日開幕の第102回陸上日本選手権(山口・維新みらいふスタジアム)では、好記録が期待できる注目種目がほかにもある。男子400メートル障害では、安部孝駿(デサントTC)が5月の静岡国際で48秒68の好タイムをマークした。岸本鷹幸(富士通)らとの争いに注目だ。
男子砲丸投げはゴールデングランプリ(GGP)大阪で中村太地(チームミズノ)が18メートル85の日本記録を樹立した。前日本記録保持者となった畑瀬聡(群馬綜合ガードシステム)とともに19メートルの大台が期待される。
男子走り高跳びの戸辺直人(つくばツインピークス)は今季2メートル30を連発しており、醍醐直幸が持つ日本記録(2メートル33)の12年ぶり更新も視野に入る。
女子100メートルは今季からセイコーの所属となった日本記録保持者の福島千里と昨年の覇者、市川華菜(ミズノ)の争いか。
女子800メートルの北村夢(エディオン)、塩見綾乃(立命大)、川田朱夏(東大阪大)、女子100メートル障害の紫村仁美(東邦銀行)、木村文子(エディオン)らに日本記録更新の期待がかかる。(堀川貴弘)
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3選手の今季100メートル
◎山県亮太(自己記録10秒00)
10秒15(+1.7)3月22日豪ブリスベン
10秒24(+1.7)4月29日織田記念予選
10秒17(+1.3) 同 同決勝
10秒13(-0.7)5月20日GGP大阪
10秒12(+0.7)6月3日布勢スプリント予選
10秒12(-0.7) 同 同決勝
◎桐生祥秀(自己記録9秒98)
10秒26(-0.5)5月12日上海
10秒17(-0.7)5月20日GGP大阪
10秒25(-0.3)6月10日ストックホルム
10秒15(+2.0)同
◎ケンブリッジ飛鳥(自己記録10秒08)
10秒22(+4.1)3月31日米オースティン
10秒25(+0.8)4月29日織田記念予選
10秒26(+1.3) 同 同決勝
10秒19(-0.7)5月20日GGP大阪
10秒12(+0.9)6月3日布勢スプリント予選
10秒21(-0.7)同 同決勝