ハンセン病患者の隔離政策により、患者だった母親(故人)とともに差別を受けたとして、鳥取県の男性(72)が国と県に約1900万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が24日、広島高裁松江支部であった。栂村(つがむら)明剛(あきよし)裁判長は男性側の請求を棄却した一審・鳥取地裁判決を支持し、男性側の控訴を棄却した。
栂村裁判長は「国によって患者の家族に対する偏見や差別が創出されたとまでは言えない」と述べ、国に差別解消の法的責任はないと指摘した。
2015年9月の一審・鳥取地裁判決は、治療法の確立で遅くとも1960年には不要となった隔離政策を国が続けたため、患者の子は「潜在的な感染者」という偏見や差別にさらされてきたと指摘。家族への差別に対し、国の責任を認める初判断を示した。ただ男性については、母親がハンセン病だと認識したのは死後3年経ってからで、不利益は認められないとして請求を棄却していた。
控訴審で男性側は、母親存命中からハンセン病との認識はあったと主張。これに対して国側は、隔離政策は患者の子どもを対象にしておらず、患者同様の偏見・差別があったとは認められないと反論し、請求の棄却を求めていた。
鳥取地裁判決を受け、全国の元患者家族568人が国に賠償を求める初の集団訴訟を熊本地裁に起こしている。