日本車両製造は、鉄道車両の海外生産から撤退すると発表した。カリフォルニアなど米国4州に納車する事業に失敗し、唯一の海外生産拠点だったイリノイ州の工場を8月末に閉めて売却する。
工場は2012年に開設された。2階建て車両やディーゼル車両をつくり、現地に納めてきた。閉鎖の大きな要因は、12年にカリフォルニア州などから300億円ほどで受注した高速鉄道用2階建て車両、計130両が納入できなかったことだ。
リーマン・ショック後の景気刺激策で、米国では車両の全部品を国内で調達する厳しいルールが課された。従業員も作業に習熟することが難しく、15年夏に試験車両の強度が基準に達していないことが発覚した。一方、台車の調達先だった米企業が翌年に倒産。損失が膨らんで事業継続が困難になるとともに、会社の財務体質も悪化した。そのため、日本車両は昨年11月に4州向け事業の撤退を表明し、受注を仲介した住友商事に解決金約370億円を支払うと発表した。
年間120両を生産できるイリノイ州の工場が約6年間で納めた車両は計220両程度。昨秋からは何も作らず、従業員の給料や電気代など年間数億円の費用だけが出ていた。工場への投資額は計100億円ほどだったのに対し、事業の累積損失は600億円に達したという。同社は18年3月期決算で4年連続の純損失を計上。こうした事態を受けて、五十嵐一弘社長は今年4月、「海外は難しい。今後は白紙」と撤退をほのめかしていた。(友田雄大)