鹿児島県屋久島町立の小中学校が島外から留学生を受け入れている「山海留学」で、関西から留学した児童が里親から体罰を受けたなどとして、児童側が町と里親を相手取り、約240万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こしていることが分かった。同町の山海留学をめぐっては、児童と町・里親の間で別の訴訟も起きており、2年連続でトラブルとなっている。
訴状によると、児童は昨年4月から関西の親元を離れ、里親宅で暮らしながら町立の小学校に通学。生活態度が悪いとして、里親の男性から竹刀で体をたたかれたり、こぶしで頭を殴られたりするようになった。
6月に入り、児童が母親に携帯電話で助けを求めるようになったため、母親が来島。里親に事情を聴くと、「子どもはたたくことも大事」「痛みで覚えさせないといけない」などと答えたという。
児童側は母親が町教育委員会に体罰を報告しても再発防止策が講じられなかったと主張。児童は6月末に関西の自宅に戻り、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断されたとして、慰謝料などの支払いを求めている。
里親は地裁に提出した意見書で体罰を認めた上で、「児童がやってはいけないことをし、言うことを聞かなかった時にだけ怒った」と主張している。
町によると、山海留学は1996年に始まり、現在は五つの小中学校で実施。各校区の校長や教頭、区長らでつくる実施委員会が主体となり、地区内で里親探しなどをしている。
町は各実施委と構成する「屋久島町山海留学実行委員会」の事務局として、留学生の募集や広報などを担当。留学生側が負担する月7万円の里親委託料のうち3万円を補助しており、今年度は約910万円の予算を計上している。
児童の母親は、募集や広報、助成をしている町が「実質的な実施主体」で、町には里親を監督指導する責任があったと主張。それに対して町は、里親への委託は各実施委がやっており、「町は当事者ではない」として、請求の棄却を求めている。
同町の山海留学をめぐっては、同じく関西から留学した児童が一昨年7月、里親宅で起きた事故で目を負傷。視力が落ち、将来的に症状が悪化する可能性があると診断されたとして、児童側が昨年12月に町と里親を相手取り、約1180万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴していることも分かった。(屋久島通信員・武田剛)