2020年東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会による「ボランティア募集説明会」が31日、全国の大学に先駆け、上智大(東京都千代田区)を会場に開かれた。これに先立つ26日には、文部科学省とスポーツ庁が全国の大学と高等専門学校に対し、大会期間中の授業や試験の日程を柔軟に変更するよう求める通知を出した。国を挙げた「ボランティア促進運動」のようにも映るが、当の学生はどう思っているのか。
31日は午前中に上智大の学生や教職員を対象に、午後には都内近隣の大学生らに対しても説明会が行われ、組織委が大会ボランティアの九つの活動分野や応募方法について説明した。
国の通知の趣旨は、「大会には教育的な意義もある」として、五輪が行われる7月24日~8月9日、パラリンピックがある8月25日~9月6日は授業や試験を減らしたり、時期をずらしたりなど考慮してほしいというもの。学生がボランティアに参加しやすいよう、国が大学側に配慮を求めた内容といえる。
この動きに対し、学生の本業は勉学であるとの観点から、インターネット上では「まるで学徒動員だ」と批判的な見方も多い。
31日の説明会を聞いた上智大外国語学部英語学科1年の岩田優美香さん(18)は「試験がなくなるわけじゃなく時期がずれるだけ。勉強はちゃんとします」と話した。国際オリンピック委員会(IOC)の要人などに付き添うアテンドのボランティアに興味があるという岩田さんは「むしろボランティアをやるためにさらに語学を勉強したいというやる気につながる」。
今年は7月30日まで試験があったという上智大看護学科1年の佐藤菜那さん(19)も「試験とかぶって五輪に携われる機会を奪われるのは嫌なので、通知はありがたい」。会場の位置や暑さなどを確認するために上智大卒業生の有志が企画して21日に行われたベニュー(会場)ツアーに参加するなど、佐藤さんは2年後に向けてやる気満々だ。
少なくともボランティアへの参加を前向きに考える学生にとっては、国の通知は歓迎のようだ。五輪に詳しい友添秀則・早大教授は「国がお願いベースの通知を出すこと自体は批判しないが、それに応じるかどうかの自由は各大学に担保されるべきだ」と話す。組織委はボランティアの募集が始まる9月中旬まで、全国の13大学を回って説明会を続ける。(平井隆介)