原爆が奪い去った日常を色鮮やかによみがえらせたい――。広島の高校生たちが、原爆投下以前に撮影された白黒写真を、最新技術と人々への聞き取りをもとにカラー化することに取り組んでいる。写真は、今年秋にも広島市内で展覧会を開き、公開する予定だ。
写真特集「この世界の片隅に」舞台を巡る
特集:核といのちを考える
広島市中区の広島女学院高の有志たちが昨年始めた。被爆者らから戦前、戦中の白黒写真を提供してもらい、人工知能(AI)を使って自動で色づけする。さらにその写真を持ち主に見せて記憶の中の色を聞き取り、最後は手作業で補正する。1枚に費やす時間は1週間から長いもので数カ月かかる。昨年11月以降、約140枚をカラー化した。
今年度は7人が参加。2年生でリーダーの庭田杏珠(あんじゅ)さん(16)は7月下旬、広島市西区の高橋久さん(89)を訪ねた。一面に咲く花の中で、両親と祖母、弟と高橋さんの5人がほほ笑む写真。「これはタンポポだった」。記憶をたぐり寄せながら高橋さんが指さした。庭田さんがシロツメクサだと思い込んでいた小さな花だ。
この写真を撮った数年後、今は平和記念公園になっている旧中島本町にあった実家の写真館は原爆で壊され、両親と弟は亡くなった。高橋さんは疎開中で免れた。
原爆で両親と兄、姉を失った浜井徳三(とくそう)さん(84)=広島県廿日市市=は、家族で花見に行ったときの写真を託した。
桜の下に広げたゴザの上で、十数人が笑顔でお重を囲んでいる。小さな子どもたちもいる。浜井さんが生まれた翌年の1935年春に撮影された。浜井さんも旧中島本町出身で、理容店だった家の焼け跡からは、父の商売道具だったはさみが十数個見つかった。
「今でも家族の死を受け入れら…