「はだしのゲン」で知られる漫画家の故・中沢啓治さんが「私の原点」と位置づけた作品「黒い雨にうたれて」が出版され、今年で50年を迎えた。映画版では、5月に亡くなった西城秀樹さんが主人公の声の役を務めた。原爆への怒りを前面に出した作品は、半世紀を経て改めて注目されている。
西城さん、原爆への思い 絶頂期に出演したアニメ映画
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「俺にはがまんができないのだ アメリカ人が物見遊山でこの広島を見にくる 自分たちが落とした原爆の結果を満足そうに見ているようで……」
作品中の主人公の言葉だ。青年誌「漫画パンチ」の1968年5月29日号に掲載された。
【特集】核といのちを考える
のちに「はだしのゲン」で有名になる中沢さんが手がけた初の原爆漫画。主人公の被爆者が原爆を落とした米国への怒りを胸に、外国人だけを狙う殺し屋になるという内容だ。
中沢さんは広島の爆心地から1・2キロで被爆し、父と姉、弟が命を失った。妊娠中だった母が原爆の衝撃でその日に産んだ妹も、数カ月後に亡くなった。
漫画家を目指して22歳で上京した当初はその体験を封印していた。しかし、上京6年目の66年秋、ともに原爆を生きぬいた母が死去。広島で火葬すると骨は形をとどめていなかった。「原爆は骨まで奪うのか」。漫画で原爆を告発すると決意し、帰京の夜行列車で構想を練って1週間で描き上げたのがこの作品だ。
原稿を出版社に持ち込むと、「…