米スターバックスは2日、中国ネット通販大手のアリババ集団と販売面で提携し、中国国内でコーヒーの出前サービスを始めると発表した。スタバが中国を代表するIT企業と急速に関係を深める裏には、コーヒーブームに沸く中国で激しい顧客争奪戦に直面していることがある。
スタバはアリババ傘下の出前サービスを使い、9月に北京と上海で出前を開始。年末には30都市に広げる。また、コーヒーの購入や会員サービスをアリババのネット通販と連携させる。この日、上海市で記者会見したケビン・ジョンソン最高経営責任者(CEO)は、「提携で中国のコーヒー文化をグレードアップさせ、消費者の期待をさらに上回れる。その意味で、デジタル化の戦略がとても重要だ」と話した。
提携の背景にはスタバの焦りがある。2017年の4~6月に既存店売上高が前年同期比7%伸びていた中国だが、今年4~6月は前年同期比で2%減に沈んだ。コーヒーブームで愛好者は増えているが、瑞幸珈琲(ラッキンコーヒー)など地場の新興コーヒーチェーンの挑戦に加え、欧米のライバルとの間で顧客の奪い合いが激しくなっているからだ。
スタバの世界全体の既存店売上高は、中国の不振から1%増にとどまり、市場が期待する3%程度に及ばなかった。この期はおひざ元の米国を含む米州でも積極的な出店攻勢が裏目に出て、既存店来店客が2%減に転じた。米中2大市場が同時に試練を迎えている。
ジョンソンCEOはこれまで「失望させるような業績だった」と認める一方で、「中国での成長戦略に100%の自信がある」と強調していた。
昨年末、アリババの協力を得て上海市中心部に焙煎(ばいせん)工房併設の巨大店舗を設置。AR(拡張現実)機能を使ってスマートフォンでコーヒー作りの過程を解説し、多くの客を集めた。これに続く出前サービスなどの展開で、巨大市場での勢いを取り戻したい考えだ。
同業の京東集団と激しいネット販売競争を繰り広げるアリババにとっても、ブランド力のあるスタバを陣営に引き込んだ効果は大きい。アリババの張勇CEOもこの日の記者会見で「我々はスタバと共同で消費者に最も美しい生活をもたらせられる。デジタル経済の時代の新たな生活方式を創りたい」と期待を込めた。(上海=福田直之、ニューヨーク=江渕崇)