米国内で大豆がだぶついて価格が下がれば、農家は収穫した大豆を貯蔵庫に置いておくしかない。
ノースダコタ大豆生産者協会のナンシー・ジョンソン氏によると、そうした事態に備えて一部の農家は貯蔵施設を増やし始めた。
しかし、米国が中国などの鉄鋼・アルミ製品にも高関税措置を発動した影響で貯蔵施設の資材費が高騰。ジョンソン氏は「誰もが施設を建てる余裕があるわけではない」と心配する。
世界の国々の経済が互いに深く結びつくいま、関税引き上げの応酬は、報復する側にも痛みをもたらす。
米国から中国に輸出される大豆は、中華料理に欠かせない食用油や家畜のえさになる。経済成長に伴い肉類の消費も増えているため、米国からの輸入減に備えた手当てが必要だ。
中国東北部の穀倉地帯にある吉林省蛟河市公安村。広大なトウモロコシ畑のわきで、わずかに植えられた大豆の葉が風に揺れる。
政府は4月、「トウモロコシから大豆栽培に切り替えれば10アール当たり600元(約1万円)の補助金を出す」と農家に通知した。米国の圧力を受けていた中国は、米国産大豆への報復関税の発動を想定し、国内での増産を求めたのだ。
だが記者が8月初めに蛟河を訪れると、大豆畑は斜面など農機が入りにくい場所に点在するだけ。大規模に栽培できる平地はトウモロコシ畑のままだった。
■「増産通知遅す…