背番号3。一塁手がつけることが多いが、今年の下関国際は違う。木下尚穏(しおん)君(3年)のポジションは、一塁の隣に立つ一塁コーチャー、そして伝令役だ。チームからの信頼を背に、大声で勝利に貢献する。
9日の花巻東(岩手)との1回戦。五回にミスが重なって先制を許した。なおも2死二塁とピンチは続いた。「間(ま)を取れ」。坂原秀尚監督からベンチで指示を受け、木下君はマウンドの円陣へ走った。背番号13の一塁手・佐本快君(2年)が青ざめていた。この回、打球や送球をうまく捕球できなかったことを悔やんでいた。
「いつものことやけえ、気にすんな」。木下君が冗談を飛ばした。一気に緊張が解けていく。佐本君だけでなく、野手たちに笑顔が広がった。次の打者を抑えてピンチを切り抜けた。
本来のポジションは捕手だが、公式戦での出場はほとんどない。でも、声が大きく、プレーへの指示も的確だと認められた。昨秋から一塁コーチャーを任せられるようになった。
練習中もミスがあれば厳しく指摘し、雰囲気を引き締める。野球部寮では、みんなが洗濯や掃除をきちんとしているかも気を配る。そんな木下君は「お父さん」と呼ばれている。
「キャプテンもできる」と評価する坂原監督は今夏、背番号3を与えた。一塁コーチャーとしてチームを支えてほしいと、あえて若い数字にした。山口大会でも出場機会はなかったが、木下君は「与えられたポジションで貢献する」と期待に応え続けた。
15日の2回戦で対戦する創志学園(岡山)も強豪だが、いつものように仲間をリラックスさせて勝利に近づけたい。木下君は「やってきたことを変えず、自分の役割を果たしたい」と意気込んでいる。(藤野隆晃)