新体操は、審査員が付ける点数だけに価値があるわけではない。観客を楽しませる演技をモットーとする鹿児島実高が12日、静岡市で開催された全国高校総体の新体操男子団体に登場し、コミカルな振り付けで観客を魅了した。
5月に亡くなった歌手・西城秀樹さんの曲「YOUNG MAN(Y.M.C.A.)」をイメージしたレオタードに、胸毛を模した毛をたっぷり施した衣装。冒頭から「ギャランドゥ」の曲に合わせ毛をむしるような振り付けを披露し、笑いを誘った。亡くなる前から、幅広い層に楽しんでもらいたいと構成に入れていたという。吉留大雅主将(3年)は「今日は敬意と追悼の思いも込めて踊りました」。
この大舞台は2年ぶり。昨年は九州大会で敗れ、総体出場を逃した。雪辱を果たすため、今年の九州大会では審査員の評価があまり良くないコミカルさを封印。体操のレベルそのものを底上げし、勝ち上がってきた。
この日初披露したプログラムでは、ユニークな振り付けを解禁。バブル時代をモチーフにした「バブリーダンス」やお笑い芸人「にゃんこスター」のネタなど流行も随所に採り入れ、観客席から一番の拍手と歓声を受けた。
試合結果は22校中21位だった。それでも、石牟礼華月(かつき、3年)は「演技中に(観客席から)笑い声が聞こえ、満員の会場を一つにすることができた気がする」と満足げな表情。新体操ではない、という批判も相変わらずあるが、石牟礼は「観客からの評価も一つの評価」と言い切る。樋口靖久監督は「いろいろな方々に応援されているのを感じる。これからも革新を追いかけたい」と話した。(松本麻美)