滋賀県長浜市の住民が千年近く守り続けてきた観音像を展示する東京・上野の施設が人気だ。市が首都圏向けに開いた異色の情報発信拠点「びわ湖長浜 KANNON HOUSE」で、展示は交代で1体のみ。開設から2年4カ月で3万人が訪れた。寺とも博物館とも違う「観音さまの空間」の魅力とは――。
上野公園の西郷隆盛像から徒歩1~2分。京成上野駅の目の前、10階建てのオフィスビル1階に観音ハウスはある。70平方メートルのフロアに、長浜産ヒノキを使った3・5メートル四方の観音堂。今月26日まで、この中央のガラスケースに鎮座しているのは、長浜市高月町の浄光寺が所蔵する十一面観音立像(高さ95・7センチ)だ。室町時代の作と伝わる。像は2~3カ月に1回入れ替えられ、この像が12体目になる。
6月までは高さ約1メートルの馬頭観音立像が展示されていた。平安後期に作られたとされ、長浜市高月町の横山神社でまつられてきた。
「京都や奈良の仏像のように有名ではないが、こんなに心に響く仏像があるなんて」。初めて訪れた新宿区の主婦、遠藤ひろ子さん(70)が言う。「博物館のように何体も並んでいると慌ただしい。1体なら、じっくり拝むことができる」
4回目という足立区の60代の男性は「地域の人たちが必死に守ってきた情熱が伝わってくる。次は、どんな素朴な観音さまが来るのかワクワクする」と話す。
琵琶湖の北東にある長浜市には…