「300ドルをトルコリラに両替した領収書を持ってきたら、野菜を無料でプレゼントします」。16日、トルコ西部ボルの野菜市場。そう記した段ボール紙や垂れ幕を軒先に掲げる店が並ぶ。米国との関係悪化で急落したリラを買い支えようと、地元の青果小売業組合がキャンペーンを展開しているのだ。
米、対トルコ関税2倍に リラ下落、新興国通貨にも波及
政権批判「怖くて言えぬ」 トルコリラ急落、庶民を直撃
きっかけは今月10日、1ドル=6・8リラとトルコリラが当時の最安値を更新し、エルドアン大統領が「(米国との)経済戦争に負けない。ドルやユーロは銀行でリラに両替しよう」と訴えたことだ。ムスタファ・アルトゥンダー組合長(40)は「国と大統領のためにできることを考えた」と話す。キャンペーン初日の13日、423人が領収書を持ってきた。
こうした動きはトルコ全土に広がっている。最大都市イスタンブールではドル両替の領収書を示せば、サンドイッチを無料にする飲食店や宿泊費を無料にするホテルが続出。南部アダナでは3日間で金1トンがトルコリラに換金された。
トルコリラは、トルコがテロ組織支援などの罪で長期拘束する米国人牧師の釈放をトランプ米大統領が求め、関税引き上げなどで圧力を強めたことで急落した。トルコ国民の反米感情は強まっているが、リラ急落に伴う物価上昇は市民生活を圧迫している。
景気後退や国家財政への悪影響の懸念から、米格付け大手のS&Pグローバル・レーティングとムーディーズ・インベスターズ・サービスは17日、トルコ国債を格下げした。トルコリラ急落が、世界の金融市場の混乱要因になりかねない危惧も高まっている。(ボル=其山史晃)