米環境保護局(EPA)は21日、撤廃したオバマ政権時代の「クリーンパワー・プラン」(CPP)に代わる新たな発電所からの温室効果ガス排出規制を発表した。対策を各州の権限に委ねるもので、石炭産業に配慮した規制緩和策だが、大気汚染で毎年最大1400人以上が亡くなると試算している。
この日、産炭地を抱えるウェストバージニア州で演説したトランプ大統領は「私は会社や雇用をなくす馬鹿げた規制を取り除いている」とアピールした。
オバマ政権の環境対策の目玉政策だったCPPは発電所からの二酸化炭素(CO2)排出を2030年までに05年比で32%減らす内容で、排出の多い石炭火力から天然ガスや再生可能エネルギーへの転換を促すものだった。
新たな規制案「アフォーダブル・クリーンエナジー・ルール」(ACE)は州ごとに石炭火力の省エネ対策を進めるもの。CPPと比べ、年間4億ドル(約440億円)の経済効果があるとしている。削減目標はなく、各州が厳しい規制をとれば排出量はCPP並みに減らせるとしているが、大気汚染による死亡は30年までに毎年最大1400人に上るという。
これに対し、環境NGO「自然資源防衛評議会」(NRDC)は「ダーティーパワー・プランだ」と批判。ニューヨークやバージニア州が差し止めを求める訴訟の動きを見せている。(ワシントン=香取啓介)