暗闇でホタルが舞い、老木に生えたキノコが幻想的な光を放つ。湿地では線香花火のような花が咲き、雨にぬれた渡り鳥の羽は宝石のようにきらめく。夏の夜、鹿児島県の奄美大島は生き物たちの輝きで彩られる。
「見事でしょう。地元の名所にできないかと思っているんです」。奄美自然観察の森(龍郷町)指導員の川畑力さん(39)が案内してくれた龍郷集落そばの林では、キイロスジボタルが幾重もの光跡を描いていた。琉球列島や台湾などに生息し、幼虫期から陸上で過ごす陸生の黄色いホタル。「水辺の生き物との印象が強いが、世界のホタルのほとんどが陸生。島でも林間にいる」と川畑さん。
来島して調査した経験もある久米島ホタル館(沖縄県)の佐藤文保館長によると、奄美大島では8種のホタルが確認され、このうちアマミマドボタルやアマミヒゲボタルなど6種が固有種(亜種も含む)。調査が進んでいないため、新種が見つかる可能性もある重要な島だという。
観察の森では、光るキノコとして知られるシイノトモシビタケが楽しめる。高さ数センチ、傘の直径1~2センチの小さなキノコで、愛称は「森の妖精」。昼間は薄茶色だが、体内の光る物質が酵素の働きで発光する。八丈島(東京都)や和歌山県、大分県などでも確認され、湿度の高い梅雨期を中心に生えては枯れるサイクルを繰り返す。奄美では条件がよければ、9月ごろまでみられる。
マングローブ林に近い湿地で夏…