長野県内でクマの出没が増えている。4~6月に里地で目撃された件数は296件にのぼり、前年の2・4倍。統計を見ると、今年は4年に一度の「大量出没イヤー」という指摘もある。大量出没年には秋以降も出没が増える傾向があることから、いくつかの対策も進められている。
県の鳥獣対策・ジビエ振興室。担当者はこう警戒を呼びかける。
「ことしは4年に一度の大量出没となる可能性があります」
里地での目撃情報をまとめ始めた2005年以降、06年、10年、14年と4年ごとに目撃件数が跳ね上がっているからだ。
実際、ことし春以降の目撃件数は、すでに前年の件数を上回っている。8月上旬には木曽町三岳の80代の男性が自宅近くでクマに遭遇し、顔や頭を引っかかれて重傷を負った。上田市鹿教湯温泉では8月中旬、養蜂施設がクマに襲われ、養蜂箱が荒らされた。
いつもの年だと山にまだエサが少なく、農作物が収穫期となる8月が里地での目撃のピーク。だが大量出没の年は平均で、9月の目撃件数が平年の5倍以上の600件以上になり、10月、11月も多いまま推移する傾向がある。
大量出没に備えて長野県は今年、新たな手を打つ。クマは川に沿って山から里に下りてくるため、川沿いの樹木を伐採し、見通しを良くするのだ。「クマは臆病なので、隠れる木がなくなれば下りてきにくい」(担当者)という。
河川まわりの伐採のため、県は今年度、森林づくり県民税も財源に1億1250万円を予算化。すでに伐採を始めた王滝村や朝日村を含め、計37カ所で伐採を計画している。
子どもへの安全対策をしている自治体もある。飯山市教育委員会は6月、クマの目撃情報のある地域の小中学校に通う子どもたちにクマよけの鈴を84個貸し出した。その後も目撃情報が増えていることから、補正予算を組んで新たに100個を購入し、貸し出す。
同教委の担当者は「学校近くや市街地での出没情報もある」と話す。「今年はこれからも確実に出ると思う。通学路近くのやぶを刈るなど、地域でも対策してもらっています」(岡林佐和)
■出会ったら…静かに後ずさり、…