鬼を退治した桃太郎は傷害罪か、正当防衛で無罪か――。静岡地裁202号法廷で県内の小学生を対象にした模擬裁判が行われ、4~6年生21人が裁判官と検察官、弁護人役に分かれて参加した。身近な物語を題材に、刑事裁判の流れや考え方を学んだ。
被告は桃太郎。人定質問や黙秘権の説明の後、検察官が「被告は鬼を懲らしめようと鬼ケ島に向かい、刀で鬼を切りつけ、大けがを負わせた」と起訴状を読み上げた。桃太郎は「けがをさせたのは間違いないが、鬼ケ島に行ったのは鬼と話し合いをするため。鬼が金棒で襲ってきたので、仲間を守るために仕方なくやった」と起訴内容を一部否認。弁護側は正当防衛で無罪を主張した。
検察側証人の鬼は「桃太郎がいきなり斬りかかってきた」、弁護側証人の犬は「桃太郎は話し合いによる平和的解決を望んでいた。桃太郎ほど勇敢で優しい人はいない」と証言。検察官は「犬や猿、キジを連れて行ったことから、桃太郎は鬼を懲らしめる目的で鬼ケ島に行ったことは明らか」と主張し、傷害罪で懲役7年を求刑した。桃太郎の刀や鬼の金棒、きびだんごが証拠品として提出された。
裁判官9人による評議では、それぞれの証言が信用できるかどうかなどを話し合い、桃太郎は無罪に。有罪だという声も上がったが、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則を適用し、正当防衛の可能性も否定できないという判断だった。
模擬裁判は、夏休み中の子ども…