福岡県上毛町が広島、長崎両市の原爆爆心地を結んだ直線の中間点にあることから、来年8月に両市の「被爆樹木」の苗木を植樹する計画が進んでいる。町は今後、両市と交流を深め、新たな平和の拠点づくりをめざす考えだ。
特集:核といのちを考える
植樹は、2020年に創立60周年を迎える広島東南ロータリークラブ(広島市中区)が記念事業として企画した。事業の実行委員長で被爆者の錦織亮雄(あきお)さん(80)によると、被爆地以外の新たな平和活動の入り口として、両市の中間点を考えたという。
地図で割り出したところ、両市を直線で結ぶ約294キロの中間点が上毛町役場付近と分かった。錦織さんは「世界から見ると、広島と長崎はセット。中間点だからこそできる平和活動を後世につなげていけたら」と期待する。
今年4月にクラブが上毛町に話を持ちかけ、「核兵器廃絶恒久平和の町」を宣言している町が受け入れを決めた。坪根秀介町長は先月、広島、長崎両市を訪問。両市長らに植樹を予定する大池公園の整備計画などを伝え、核廃絶や世界平和に貢献していく考えを伝えた。
両市には73年前の原爆の熱線や爆風、放射線を受けながらも命をつないだクスノキやツバキなどの被爆樹木が複数残っている。町によると、こうした被爆樹木から種を取って育てた苗を、来年8月に両市と町の小学生らが植える予定だ。
植樹するのは、東九州自動車道開通に伴う観光拠点として整備を進めている大池公園。園内の池を挟んで広島と長崎の植樹ゾーンを設けるなど準備を進めている。両ゾーンを生かし、モニュメントなども検討するという。坪根町長は「恒久平和への思いを未来に発信できるきっかけになれば」と話している。(小浦雅和)