監督は大声で存分に指示を――。大分トリニータに、25日にあった明治安田生命J2リーグの徳島ヴォルティス戦直前、浅田飴(東京都千代田区)から薬用のど飴(あめ)が90缶届いた。たびたび声がれする監督を案じたサポーターがツイッターで寄せた「SOS」に同社が反応。チームを巻き込んだ交流に広がった。
「前半5分に叫んだら、こういう声になってしまって。選手にもなかなか指示が通らなかった」。18日の東京ヴェルディ戦後のインタビュー。大分の片野坂知宏監督の声はかすれ切っていた。ハーフタイムにスタッフがサポーター席に走り、のど飴の提供を求める一幕まであったという。
これを受け21日午後、サポーターの一人がツイッターでつぶやいた。「浅田飴さんがスポンサードしてくれたら(中略)鎖骨広告が空いています…同じブルーだし…片さんののどを守ってあげて…」。チームカラーも、同社の看板商品の缶のひとつも青であることに着目した投稿だった。
すると浅田飴の公式アカウントが、ユニホームの広告スポンサーを念頭に「でもお高いんでしょう…」と返信。「指示も応援も声が命ですものね」などのコメントも寄せた。
やりとりはチームを運営する大分フットボールクラブ(FC)の企画広報室も見ており、折よく東京にいた営業担当に連絡。浅田飴にあいさつの電話をし、23日には面会して監督の手腕や声がれを説明した。声がかれたインタビュー動画も見せた。「すごくつらそうだった」と浅田飴商品開発部の担当者。その場で、のど飴の提供を申し出た。
監督は徳島戦でさっそく口にして、選手に大声で指示。0―1で敗れたが、インタビューで飴について問われ、「あれだけ声を出したのに全然しわがれなかった。もう手放せなくなりました」とコメントした。当日は浅田飴を手に、チームに声援を送ったサポーターもいたようだ。
大分FCの担当者は「ツイッターの投稿で風通しがいい会社だと感じ、声をかけやすかった。ご縁を大事にしたい」。浅田飴の担当者も「サポーターの力がすごく伝わり動かされた。これまで声に関わる芝居や音楽、落語などを支援してきたが、スポーツ分野でも協力したい」と話している。(寿柳聡)